4月から家庭用電力料金が完全自由化され、利用者は電力会社を選べるようになる。3月までに新しい料金メニューがほぼ出そろい、多くの利用者が料金値下げの見込める新しい契約に切り替えるのか注目されていたが、2月末現在で切り替えたのは関東地域で約2000万世帯のうち19万にとどまっており、様子見傾向が強い。来年にかけて、地元の電力会社と新規参入会社との奪い合い競争が本格化しそうだ。
後出しじゃんけん
東日本大震災以降、新規参入した電力会社が販売する電力のシェアは拡大傾向にあり、2014年度は全国の電力の5.2%を供給するまでになっている。供給実績のある会社の数は14年度以降に急増、15年度は90社になり電力市場で競争が増している。
大手広告代理店の博報堂が行った調査では、80%の人が自由化について認知しており、3分の2が「自由化後に電力を変えたい」と答えている。一番の関心事が「料金が安くなる」ことで、値下がりへの期待度は高い。
しかし、発表されたメニューのプランの多くは複雑な内容で、比較してどれが有利なのかが分かりにくい。ネットでは比較サイトなどがいくつか公開されてはいるが、どれを選ぶかとなると迷ってしまのが現状のようだ。
自由化によって、これまで地域の電力会社が独占供給してきた家庭用電力市場が開放されると、約8兆円の小売市場が生まれるため、ガス、石油、鉄道、携帯電話、旅行などの業界から新規参入が相次ぎ、全国では200社を超えている。年初から新規参入企業が発表した新しい料金メニューをめぐって、PR合戦の様相になっている。
昨年末に先頭を切って値下げになる料金プランを発表したのは、多くの契約者の獲得をもくろむ東京ガスだった。その後、1月になってJXグループの「ENEOSでんき」が、使用量によって違いが出るが10%前後割引となるメニューを出したことが各社に衝撃を与えた。これを受けて東京ガスは再度値下げ率をアップさせたメニューを出し直した。 ライバルの出方を見極めてから割安メニューを出してくる「後出しじゃんけん」の企業もあり、業界内では疑心暗鬼になっている。一方、守る側の東京電力などは、多くの電気を消費する時間帯を選ぶことで料金節約になる新しいプランなどを発表、顧客を何とか引き留めようと懸命だ。