2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2016年2月29日

 筑波大学発のベンチャー企業、サイバーダイン社が開発した「ロボットスーツHAL」について、山海嘉之社長(同大学大学院教授・サイバニクス研究センター センター長)が2月22日、日本記者クラブで講演、「会社を起こして歩んできたが、『重介護者ゼロ』に挑戦し、社会改革や産業変革につなげたい」と述べ、世界初の先進的なサイバニクス技術を介護、難病治療、再生医療、産業現場などに生かす考えを示した。「HAL」などのロボット技術にについて「昨年11月から国内販売が承認され、今年1月に保険適用が認められることが決まり、4月から適用になる」と話し、今後はレンタルの形でより広い分野で利用が広がることに期待感を示した。

ロボットスーツの実演(日本記者クラブ提供)

動かなかった足が動く

 介護用のロボットスーツを開発・製造する会社を2004年に設立。その後は製品の改良を重ね、数年前から介護の現場にスーツを提供、サイバニクスを利用したロボット技術は世界的にも注目されてきた。

 このロボットは皮膚にシールを貼るだけで人間の脳神経から出る信号をキャッチし、その信号をロボットの中で整理して、再度人間に伝えることができる機能を持っている。この日はロボットが人間の動きにどのように反応するのかの実演が行われた。圧巻だったのは、人間のそばに置いたロボットと人間の間にケーブルをつないでおくと、人間側が足を動かそうと思うと、その信号がロボットに送られて、人間が足を動かさなくてもロボットの足が動いた。山海社長が「不気味な感じ」と表現したように、この仕掛けを使えば、重病で手足の動かない患者でも、動かそうとする意志があればロボットを装着することで、ロボットが自分の体の一部になって手足を動かしてくれる。

 山海社長は「脳神経が壊されて50年間も足が動かなかった人の足を動かすことができた。こうなると動かそうとする信号が神経機能を改善させ、脳の中で再生ループができてくる」と説明、サイバニクスを使ったロボット技術が現代医学では治らないとされてきた多くの重症、難病患者にとって朗報になるとの見方を明らかにした。


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