2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2016年3月24日

 それはまず、池田班が、比較の対象とはならない別の数値を比較していることだ。「患者で84%(鹿児島大)、71%(信州大)」という数値は、患者集団の「遺伝子(正確には、アレル)保有率」であり、「日本人全体で4割程度」という数値は、日本人が保有する「遺伝子頻度(アレル頻度)」だからである。

 池田班のやっていることをわかりやすいたとえで言えばこうだ。夫婦12組、計24人のある集団の収入を調査したところ、少なくともどちらか1人が500万円以上の収入のある夫婦が11組あった。働く日本人全体の40から50%が年収500万円以上であることがわかっているとする。だからこの集団は平均より年収500万円以上の人の割合が多い。これは本当だろうか。11組すべてでどちらか1人だけが500万円以上稼いでいたとすれば、11/24x100=45.8(%)である。これは日本人の平均40から50%と変わりない。

 詳しく説明する。HLA型は父・母の両親から各1個ずつ引き継ぐ2個の遺伝子により決まっている。例えば、12人の患者がいれば、遺伝子は24 個ある。「遺伝子保有率」とは12 人の患者において2個のうち1個でも特定のHLA型を持っている人の割合(●/12人)であり、「遺伝子頻度」とは24個の遺伝子のうち特定のHLA型が占める割合(▲/24個)のことである。

比較してはいけないものを比較する

 ここで*05:01型をA、*05:01以外の型をaと表すとする。HLA-DPB1はAA(ホモ)、Aa(ヘテロ)、aaの3通りのパターンがある。仮に計12名、AA、Aa、aaがそれぞれ3名、6名、3名の集団があったとすると、*05:01の「保有率」は12 名中9名で75%だが、「遺伝子頻度」は24個中12個、すなわち、50%となる。保有率と頻度はまったく別のもので、同じ集団の異なるものを見ていることが分かるだろう。

 筆者は改めて正しい比較を、すなわち、遺伝子頻度同士の比較を行うため、まずはAA、Aa、aaを保有する人の人数の再現を試みた。


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