2024年11月22日(金)

それは“戦力外通告”を告げる電話だった

2016年4月7日

 現在勤める株式会社トラバースは、測量調査・地盤調査を主な事業とする会社で、G.G.佐藤は営業を務める。もともと人柄は良く、清潔感もあり何より健康的である。営業としての成績に関しては何も問題はなかったが、それでも仕事はつらかったという。

 「何もわからない中で続けるのは、正直つまらなかったよ。受注から先が本当の仕事だし、そこでは経験豊富な現場監督にどやされる毎日。仕事ができないと判断されたら、もう発注はもらえない。野球とはまた別のプレッシャーがある」

 体を鍛えることに関しては誰よりも追求してきた。しかし、ビジネスにおいて、鍛え抜かれた肉体はスーツを美しく着こなすことくらいしか役に立たない。もがきながら、失敗しながら、「社会人」1年生を全うした。いつしかビジネスの楽しさを実感するようになっていた。

 「プロ野球は自分の力だけで成り上がっていく世界だったけど、今は違う。一つのプロジェクトをチームで完成させて、みんなで喜びを分かち合える。今までになかった喜びだよ」

 現場での指示や、関係各所とのやりとりも随分と板についてきた。自分が受けた仕事が、形となってアウトプットされる過程を全てマネジメントできる喜びは、本質的なビジネスの楽しさを運んできてくれる。

 「野球も、ビジネスも、共通するところはたくさんある。練習して、試合があって、反省してまた練習する。このサイクルは同じ。企画を作って、商談して、反省して、もっといいものにする。継続することが、次の成果につながるということは、どの世界も同じなんだと実感している」

 「男なら、夢の一個くらい叶えたい」

 そう言って、大学卒業後にプロ野球選手になるために向かったアメリカ。夢を叶えた先、野球で体を壊し、そして見つけた本当の生き方。「人を活かして仕事をしていきたい」と、今後の展望もクリアに見えている。

 「人生のピークは、常に未来にある」

 そう言って伊達男は笑った。

  
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◆Wedge2016年4月号より

 


 


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