世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月15日

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 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのバリー・ブザン名誉教授が、ノッティンガム大学China Policy Instituteのブログに、中国のソフトパワーと統治システムの本質的な矛盾を指摘する論評を寄稿しています。要旨は、次の通りです。

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中国の3つの弱点

 中国は、ソフトパワーの面で遅れをとっており、それが自身の弱点だということを知っている。国際的な地位の向上、西側との競争、自らの文化と「中国の特色」の防衛に、ソフトパワーを高める必要性を正しく認識している。しかし、ソフトパワーが、主に市民社会から生まれることを理解していない。ソフトパワーについて政府にやれることは、経済面はいざしらず、文化面ではほとんどない。政府が主導すれば、却ってソフトパワーの有効性を損なう。人々はそれをプロパガンダだと捉え、時には拒絶すらする。

 中国の問題は三つある。一つは、中国政府は海外で良いイメージを持たれていない。二つ目は、中国政府は、経済改革の結果生まれた市民社会を恐れている。三つ目は、中国政府は「市民社会の邪魔をしない」やり方を知らない。

 第一の問題に関して言えば、民主主義に対し強く反対し強力な権威主義的統治をしていることで、中国は、西側主導の国際社会の外れ者となっている。経済は称賛されているが、時折見せる強硬な対外姿勢や、少数民族や市民社会に対する弾圧は、海外における中国の負のイメージを助長している。海外の多くの人が、中国政府を信用していない。

 第二の問題については、中国政府は国民を恐れている。これは、中国政府が市民社会を弾圧し、国内治安を重視していることから分かる。それが中国の負のイメージをさらに助長している。中国共産党のもつ不安感と党の存続を優先させる姿勢は、中国だけではなく世界全体に対して重大な影響を及ぼす。市民社会に対する抑圧的態度は、その規模や文化に見合った、中国が本来持つべきソフトパワーの正当性を損ねている。中国共産党は不安に駆られ、対外政策よりも国内政策を優先させている。両者は密につながっている。体制の安全が国家の安全より優先され、国内のナショナリストの批判をかわすために往々にして対外的に強硬になる。これもまた中国のイメージを悪くしている。

 第三に、中国政府は、どのようにすれば市民社会の「邪魔をしない」かが分かっていない。中国政府は、パブリックディプロマシーによって、ソフトパワーを推進しようとしているが、両者は往々にして矛盾する。中国共産党は、市民社会から生まれるソフトパワーと国家が推し進めるパブリックディプロマシーないしプロパガンダの違いを理解していない。特に政府が疑念を持たれている時、この両者の矛盾は大きくなる。例えば、孔子学院は中国政府とのつながりが強すぎるために、学術の独立を阻害するとして非難の対象となっている。中国は、世界が中国の党および国家と、中国の国民および文化を分けて考えていることを理解しなければならない。

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