WEDGE REPORT

2016年4月22日

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福島の被ばくと子宮頸がんワクチン。この2つのテーマに共通して潜む「支援者」や「カルト化」という問題を、福島出身の社会学者、開沼博さんと、医師・ジャーナリストの村中璃子さんが語り尽くした対談記事はこちら(前篇後篇)。本記事は対談の内容に関連するコラムです。

 中2で子宮頸がんワクチンを接種した頃から失神を繰り返し、現在では、歩行障害と光過敏で杖とサングラスが手放せないという少女がいる。

 しかし、周囲から聞こえてくる話はこの一文から想像される物語とは少し違っていた。

周辺取材から明らかになった事実

 母親は、少女が小学生の頃から学校では知られた人物。「娘がいじめられている」と言っては、少女が副キャプテンを務めるクラブ活動の、キャプテンの少女やその親などに繰り返しクレームをつけていた。

 中学に入り2年生になった時、ある事件が起きた。部活動中の体育館に突然乗り込んできた母親は薬袋を示し、他の部員が心労をかけるため娘は心の病になったと主張。部員と父母会、学校に謝罪させた。処方されていたのは偏頭痛のための鎮痛薬だった。同学年の部員は全員部活を辞めた。

 地元の名門校に進学した少女は、高校では「よく失神する子」として知られるようになる。しかし、今ではワクチンのせいということになっている失神に対し、冷ややかな反応を示す同級生も多い。

「最初は救急車が来たりして驚いたけど、今はまたかって感じです」

 先生の話が長い、テストができないなど面倒な状況になると少女は失神する。失神と言っても静かなもので、突然、机にうつぶせになってから、ゴロンと受け身をとるように床に崩れ落ちるため、決して怪我をすることはない。クラスでも失神に対処するためのルーティンができていて、うつぶせになると教師の合図で周りの生徒が机や椅子をどけ、空いたスペースに倒れると担架が準備され保健室に運ばれるという。

 歩行障害や光過敏も訴えるようになった少女は高2からほとんど授業に出ていないが、母親は卒業に必要な補習を受けさせることに納得しない。

本人に直接取材を申し込むと内容証明が届いた

「訴えられかねないので……」としながらもある人が明かしてくれたところによれば、卒業直前の年明け、母親は突然、娘を特別支援学校に転校させた。しかし、転校のほんの数週間後、なぜか元の高校に再び転入。結局、少女は補習を受けずに普通高校を卒業することになった。他の生徒や親の間では、不公平感が広がっている。

 少女が置かれた環境を懸念して本人に直接取材を申し入れたが返事はなかった。プライバシーには配慮しているが、後日取材方法に抗議し記事化しないことを求める内容証明が両親の代理人から編集部に届いた。

 ワクチン被害を訴える親たちの背景には、彼らの主張からは見えない事情が存在することがある。

〔関連記事〕開沼博×村中璃子対談「放射能と子宮頸がんワクチン カルト化からママを救う」前篇はこちら、後篇はこちら

  
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◆Wedge2016年5月号より

 

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