WEDGE REPORT

2016年4月21日

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福島の被ばくと子宮頸がんワクチン。弊誌Wedgeが取り上げ続けてきたこの2つのテーマには似通った問題が潜んでいる。福島出身の社会学者、開沼博さんと、医師・ジャーナリストの村中璃子さんが、縦横無尽に語り尽くす。
※本記事は4月20日発売のWedge5月号の記事の一部です。

※前篇はこちら

両論併記のメディアが誤った少数意見をばらまく

編集部(以下、――) 前篇記事で紹介したように、目に見えない放射能やワクチンに対して不安を抱える人に、カギカッコ付きの「支援者」が群がり、「不安寄り添いムラ」を形成し、攻撃性まで帯びてしまう。どうしてこんな悲しい事態に陥るのでしょうか。その原因は、メディアにもあるのではないでしょうか。

開沼博(以下、開沼) 「不安寄り添いムラ」は、メディアが定期供給するニセ科学言説資源を利用して生き延びていますから、それがなければここまで状況は悪化していなかったでしょうね。

 漫画「美味しんぼ」をはじめ、一部の週刊誌やテレビ番組などさまざまな媒体が、ニセ科学、デマを再生産して利益を得てきましたが、ムラの中で流通する言葉は社会全体から見ればごくごく少数の言説をかき集めただけ。甲状腺がんの問題もよく話題になりますが、「福島で甲状腺がんが多発している」と論文にしている専門家は、岡山大学の津田敏秀さん以外に目立つ人はいない。その論文も出た瞬間、専門家コミュニティーからフルボッコで瞬殺されています。

 この構造を把握していない人たちを利用する「支援者」や自称科学者たち。大手メディアも、普段のクセで両論併記をして、まともな専門家と同じ分量を割くから、50対50の論争なのかと勘違いする人が出てくる。

村中璃子(以下、村中) この前、面白いことがありました。ある女性ファッション誌が、子供に子宮頸がんワクチンを打たせるか打たせないか、というような特集を組みたいと取材に来たんです。

村中璃子(むらなか・りこ) 医師・ジャーナリスト
一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。北海道大学医学部卒。WHOなどを経て京都大学医学研究科非常勤講師も務める。
Photo: Naonori Kohira

 小さい子供のいる若い女性のライターさんが言うには、「ワクチンは危ないと言っている医師ばかりかと思っていたのに、村中さんの記事に出てくる人以外に探せない」と。でも「ゼロベクレル派」で有名な編集長は「両派5人ずつ探せ」と言っているらしく、ワクチン危険派を5人も探せないからどうにかして欲しいって言うんです。

開沼 ノイジーマイノリティーとサイレントマジョリティーの話なんですよね。メディアは、サイレントマジョリティーを無視しようとする。自主避難し続ける人は取り上げるけれども、その何倍も存在する自主避難から戻ってきた人や残された父親の筆舌に尽くしがたい不条理は取り上げない。

(参考記事:「自主避難したまま戻らぬ"ナチュラル妻"」

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