チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年4月26日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

 2016年4月22日、南シナ海で行う活動に電力を供給するため、中国が海上浮動式の原子力発電所を建設する計画であると報じられた。原子力発電所は、もちろん、電力を供給するためのものである。どこに建設しても、かまわないように思える。

海上浮動式原子力発電所は実行段階に

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 この報道とは別に、中国共産党機関紙人民日報傘下の国際情報紙は、中国船舶重工集団公司が、渤海船舶重工有限責任公司において、初となる海上浮動式原子力発電所の建造を計画していると報じた。渤海油田のエネルギー需要を満たすために、20基近くの海上浮動式原子力発電所を建設する計画であるとしている。中国の海上浮動式原子力発電所の計画は、すでに、実行段階にあるのだ。

 浮体は、陸上から離れた海上に設置されるため、地震や津波の影響を受けにくく、海洋自体も応急冷却器の役割を果たし、深刻な事故が生起した状況下でも、海水を浮体内に取り込むことで、炉心溶融(メルトダウン)の過程を阻止することができ、原子炉の安全を保障する、とされている。良いことづくめに思える海上原子力発電所であるが、これを南シナ海という場所に設置することには、中国にとって大きな意味がある。

 そもそも、南シナ海で、何のために大きな電力を供給する必要があるのだろうか? 一つは、渤海と同様に、油田等のエネルギー需要を満たすことだろう。電力供給が容易になれば、中国は、南シナ海における海底資源の採掘を本格化させることができる。

 しかし、中国が一方的に海底資源の採掘を開始すれば、周辺各国との緊張が高まることになる。南シナ海では、中国以外の国々も、それぞれの海域に対する権利を主張しているからだ。実際に2014年5月には、南シナ海で、中国が、ベトナムも権利を主張している海域にオイル・リグを展開して試掘を行い、両国海軍や法執行機関の数十隻にも上る数の船舶がにらみ合う状況に陥った。

 中国が、南シナ海における十分なエネルギー供給を可能にするということは、大規模な海底資源開発を開始することを示唆するものでもある。南シナ海において中国と領土紛争を抱える周辺各国は、中国の動きに神経をとがらせることになる。

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