母子手帳が世界を変える

2016年6月11日

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吉田穂波 (よしだ・ほなみ)

国立保健医療科学院 生涯健康研究部主任研究官

1998年三重大学医学部卒後、聖路加国際病院産婦人科で研修。2004年名古屋大学大学院にて博士号取得。ドイツ、英国、日本での医療機関勤務等を経て、2008年ハーバード大学公衆衛生大学院入学。2010年に大学院修了後、同大学院のリサーチ・フェローとなり、2011年に起こった東日本大震災では産婦人科医として妊産婦と乳幼児のケアを支援する活動に従事。2012年4月より国立保健医療科学院にて、公共政策の中で母子を守る仕事についている。

 近年、人間を取り巻く社会や環境は大きく変化しています。家族や地域、コミュニティの意向など、個人のライフデザインを決定づけていた文化や制度が、今では個人の意思を尊重する方向に変わり、結果として結婚や妊娠・出産に関しての社会的圧力が薄まったのがこの30年の特徴でした。グローバル化が進む中、コミュニケーション方法の変容で言えば、新聞、テレビなどのマスメディアよりも、インターネットで膨大な情報を手に入れるようになり、いつも、どこかの誰かの情報に繋がっています。

 このような中、家族形成や人生設計を含むライフデザインを考え、決めていく際に、何千、何万もの選択肢が求められるため、選ぶこと、決めることが以前に比べるととても難しくなっています。あまりにも多くの選択肢があるために「もっと良い答えがないか」と探し続けたり、正解が分からなくなったり、決定を先延ばしにしたり。そのような環境の中で、若い世代は結婚、妊娠、出産、子育てに向き合っているのです。母親の平均出産年齢をみると、2011年の場合、第1子が30.1歳、第2子が32.0歳、第3子が33.2歳であり、初めて第1子出産年齢が30歳を超えました(図1)。

 母親の出産年齢が上昇しているのは日本だけでなく先進国全体に共通している変化ですが(注1)、この40年間に日本では4.2歳の結婚年齢の上昇が見られています。

 今まで我が国の周産期医療は世界最高レベルを誇ってきましたが、医療の安全性を重視するあまり「胎児中心」「異常中心」の医療であったとの反省が聞かれるようになりました。少子化が進む今、これからは「母親中心」「日常中心」であり、母親そのものが満たされ、生き甲斐や将来の希望を持ち、わが子に愛情を注ぐことのできるような妊娠期の環境作りが必要とされています。本稿がその潮流の嚆矢となれば幸いです。

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