WEDGE REPORT

2016年6月23日

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村中璃子 (むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

 その内容は、ウェブ記事公開の2週間以上も前の5月下旬、「同窓会員の皆さまへ」というタイトルで医局員宛てに送られたメールとほぼ同じで、近く第三内科の主任教授と医学部長を同時辞任するつもりであるというものだった。

 池田教授は2度の挑戦で医学部長となり、学長選に立候補して敗れ、副学長となっている。メールが送られてきた5月下旬、あれほどまでに執着して就任した医学部長を任期前に辞めると言いだした池田教授に一体何があったのかと医局内は騒然としていたという。

 この問題が明るみに出る前から辞任の意を表明していたという池田教授。信州大学には、ガバナンスの甘さが深刻な問題を生んでいる現状を自覚し、池田教授が辞任してしまう前にしっかりとこの問題を追及し、信頼を取り戻してほしい。

 大学の信頼だけでなく、アカデミア全体の信頼のためにも、だ。

 池田教授は、医学部長で副学長であるだけでなく、数千万円の税金を使いながら子宮頸がんワクチン副反応問題という、公衆衛生行政の要である“定期接種ワクチン”の研究を行っている厚生労働省指定の研究班の班長である。

 子宮頚がんで失われる日本人女性の命は年間約3000人。

 命に責任を持つ仕事をする医師の1人として、HLA型(関連記事)もマウスも「知らなかった」「勘違いだった」「予備段階の実験だった」では済まされない。

 また、「論文に出したわけではない」「メディアが報じただけ」という弁明も通用しない。成果発表会より前に、論文をはるかに上回る社会的インパクトのあるTBSの取材をわざわざ受けたのは池田教授自身だ。

当事者たちに反省なし

 池田教授の言動は、アカデミアに不正問題に迅速に対応する制度がないことや、科学が分かりにくいことを上手に利用した、科学者として許しがたいものである。

 このような医師・研究者を、雇用している信州大学や、研究班長に指定して税金を使って研究を行わせてきた厚生労働省は、調査委員会を設置して、直ちに調査に入るべきだ。

 ウェブへの転載にあたり、A氏に追加の質問と、抗議や加筆すべき点を訊ねるメールを送った。A氏からの返信は以下のとおりだ。

村中先生
御世話になっております。
私といたしましては、先日御会いした際、御話しをした内容が真実で、だいたい全てです。信州大学医学部産婦人科講座といたしまして、「子宮頸がんワクチンの接種」には賛成です。ただ、ごく一部で、同ワクチン接種後に、副作用が認められます。これが、何かしらの遺伝的素因が原因かもしれません。
ですので、自己免疫疾患の素因を有するマウスを用いて検討を行っておりますが、まだ、パイロット実験の状態で、有意差を認められるような結果は得られていません。将来、何かしらの情報が得られれば、医療機関で同ワクチン接種の際、付加コメントが出来れば良いかと思っています。宜しく御願い致します。
A

 Wedge編集部は7月号発売直前の6月17日、厚労省担当課に記事の内容を説明しに行った際に、池田修一教授から厚労省に対し電話が入ったと耳にしたという。

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