英国のEU離脱から始まる世界の混乱の時代がやってきた。2016年6月24日の金曜日は朝からめまぐるしい変化の大荒れの一日であった。結局、趨勢が決まったのは午後になってからで、国民投票の得票率で離脱派が51.9%を取って勝利を収めたのである。前日の予想を覆して大どんでん返しの結果になった。的中することで有名な英国のブックメーカー(賭け屋)ですら読みが外れて世界中が驚いているはずだ。
さて、24日の午前中は、当社(AMJ)の株主総会が行われたが、総会中に刻一刻と開票が進み、円ドル為替は上げ下げを繰り返したが、最終段階では一気に99円台をつけるという乱高下を展開した。その間は、コモディティー(レアメタルの相場)がどのように影響を受けるのかを心配しながらの株主総会であった。レアメタル市況は政変や金融相場の変化に敏感で相場が急騰したり急落したりするから、その対応に苦慮したのである。
英国人に離脱を選択させた最大の要因は何か?
前日の木曜日にオーストリア人の取引先がAMJに来社したが、レアメタルの話もそこそこに、英国のEU離脱の話題で持ちきりになった。前の日に彼らは英国の離脱は自信を持って確実だといっていた。かつては安全で平穏だったヨーロッパが今や異民族によって危機にさらされているから、英国民はEU離脱を心から望んでいると言及したのである。EU域内は誰でも自由に行き来できる利便性と引き替えに、現場ではテロの脅威が増幅しているばかりではなく、英国人らしからぬ「差別意識」すら、国内では拡大しているというのだ。
日本におけるあらゆる情報は「最終的には英国は離脱という選択はしないだろう」というのが大方の予想であった。一日明けて結果は彼らの予見が的中した。やはり、我々日本人の欧州に対する現場情報は不足していたのである。私などは、年に何度も欧州を訪問し、レアメタルの会議では世界いたるところでヨーロッパ人と意見交換しているが、的確な情報分析はできていなかったと認めざるを得なかった。
EU離脱の投票の決定打はこれだった
いうまでもなく英国は欧州(EU)の平和と繁栄のために重要な存在である。市場統合は充分に英国経済のメリットになっていることも当然であるが、欧州の安全保障や外交上の安定性を維持するのにも大切な存在である。英国人にとっても理性的な判断をするならば普通はEU離脱という選択はあり得ない。事実、今回の決定で英国通貨(ポンド)は暴落しているし、コモディティーも暴落した。英国経済が不調になれば英国にいる海外企業は英国から出て行くのは目に見えている。国民投票はその時々の感情やセンチメントが左右する。今回のEU離脱の決定にはEUに入ってくる移民の受け入れ問題が予想以上に影響して離脱派の得票が伸びたようだ。
英国の地方都市では増え続ける移民達に仕事を奪われた労働者達の声なき声がEU離脱の後押しをしたことも無視できない。ロンドンなどの大都市部ではEUからの離脱を希望する市民は少ないようだが、地方都市では保守派も革新派もやはり「EU嫌い」で「移民嫌い」な人々が優勢であったようだ。地方の労働者の声なき声が決定打となったのである。