ラマダン期間中の行動に注意
イスラム世界は現在、7月5日ごろのラマダン(断食月)明けに向け、日中の飲食を一切断つという苦行に最後の追い込みを掛けている時だ。しかも事件が起きた1日は集団礼拝などが求められる金曜日であり、過激派の宗教心が高まる日でもあった。外国人や富裕層ら“不信心者”が利用することで有名だったレストランは過激派にとって格好の標的だったろう。
バングラデシュのハシナ政権はこれまで、ISの存在を否定するなど過激派の取り締まりには熱心ではなかった。先月初め、全国一斉の取り締まりを行い、約1万2000人を拘束したが、捕まったのはほとんどがチンピラのような犯罪者か政敵の野党関係者だった。
ISは対外戦略の責任者である公式スポークスマンのモハメド・アドナニが海外の支持者らに地元でテロを起こすよう呼び掛け、これに刺激されたかのように、米フロリダ州オーランドでの史上最悪の銃撃事件(49人死亡)やフランスでの警官夫妻殺害事件などが続き、世界各地で、とりわけイスラム教国でのテロが懸念されていた。
テロ専門家によると、今回の事件はシリアの本部からの具体的な命令に基づいた犯行というよりも、アドナニの呼び掛けに応じて地元のIS連携組織が一匹オオカミ的にテロを起こした可能性が強いのではないか、という。
海外での安全をどう確保するか、あらためて問われることになりそうだが、普通の民間人がどこで、いつテロが起きるかを正確に知ることは不可能だ。しかしテロに遭遇する危険性をできる限り小さくすることは可能だろう。第1にテロ発生の蓋然性が高い国や地域には、不要不急の場合、少なくともラマダン期間中は近づかないことだ。
イスタンブール空港のテロが起きた時、日本人観光グループがトルコ国内にもいた。幸い安全上、何も問題はなかったが、トルコの観光地が過激派に狙われていることは分かっており、旅行の日程を別の時期にずらすべきではなかったか。昨年3月、チュニスの博物館が襲撃され、日本女性3人が殺害されたことを忘れてはならない。
イスラム教国では、ラマダン期間中は特に、外国人などが利用する飲食店への出入りは慎んだ方がいい。バングラデシュのように、過激派の取り締まりが比較的緩い国では特にそうだ。「自分の身は自分で守るように行動することが危険を小さくする」(テロ専門家)ということだろう。まず自衛の意識を持つこと、それこそがテロに遭わないための対処法だ。