世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月20日

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 エコノミスト誌6月11-17日号は、これまで遠慮がちだったインドはモディ首相の下で「押し返す」外交に転じ、核保有国としての承認を求めて精力的に動いている、と報じています。要旨、次の通り。

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「非同盟」主義だったインド

 インド外交は伝統的に「非同盟」主義を採ってきた。これは実際には、世界と距離を置き、周辺諸国には過敏なまでに慎重に対応することを意味する。中国がまさにそのケースで、インドは中国の手厚い対パキスタン経済・軍事支援や、ネパールやスリランカをインドの影響圏から引き離そうとする動きに対しても強く出ることはなかった。しかし、モディの下でそうした姿勢は変り、今や「押し返すこと」がインド外交の合言葉になった、と言う専門家もいる。

 モディ首相は最近の外遊でこのことを示している。5月に訪問したイランでは同国とアフガニスタンを結ぶ鉄道・港湾の開発を約束したが、同ルートが、中国の計画するパキスタン経由のエネルギー及び運輸インフラと並行しているのは偶然ではない。

 また、モディは6月4日、アフガニスタンで水力発電所を落成させたが、そこにはアフガン政府支援だけでなく、インドがパキスタンと違って寛大で責任ある国であることを誇示する意図があった。

 続いてモディはスイス、米国、メキシコを歴訪したが、目的は長年の複雑なインド外交の完遂にあった。インドは数十年来、核保有国としての国際的承認を求めてきており、近くミサイル関連技術輸出規制管理レジーム(MTCR)に加盟する。しかし、核拡散防止に努め、民生用原子力の安全規制要件を受け入れているにも拘らず、インドは核のエリートクラブたる原子力供給国グループ(NSG)からは締め出されている。これは、インドのような大国にとって屈辱的であるだけでなく、有用な核関連技術や市場にアクセスできないために余分なコストにも繋がっている。

 ただ、10年前、米国はインドの気を引こうと、他のNSG諸国に逆らってインドと民生用原子力に関する二国間協定を結び、さらに、2008年には強情な中国を説得して、インドとの核関連技術取引について限定的な例外を認めさせた。現在インドは、今月後半に開かれるNSGの会合を事態進展の好機と見て、NSG正式加盟獲得にいっそう力を入れている。

 インドの動きを非難の目で見ていたスイスやメキシコ、そして核アレルギーの日本も、今やインドのNSG加盟を支持している。イタリアも、インド人漁民を海賊と誤認して殺害したイタリア人海兵隊員をインドがイタリアに送還すると、インドのMTCR加入に反対しなくなった。

 一方、中国は西側諸国のインド接近に神経を尖らせている。中国が恐れているのは、モディは米国との良好な関係を利用してインドを優位にしようとするのではないかということだ。実際、ペンタゴンはここ数年、強大化する中国への対抗策の一環としてインドに言い寄ってきた。しかし、インド軍関係者が米国との協力に熱意を示し始めたのはつい最近のことだ。6月、米印日はインド洋ではなく、日中が領有権を争う尖閣諸島近くの海域で海軍合同演習を行う。また、モディは6月8日の米議会両院合同会議直前の演説の中で、米国はインドの「不可欠なパートナー」だと述べた。米印があからさまな軍事同盟を結ぶ可能性は低いが、僅かでもその可能性があれば中国はそこに全神経を注ぐことになろう。

出典:‘Modi on the move’(Economist, June 11-17, 2016)
http://www.economist.com/news/asia/21700459-once-diffident-india-beginning-join-dance-modi-move

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