2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月25日


アジアの安全保障問題について、これまで比較的関心の薄かったEU諸国が、中国の南シナ海への海洋進出に対し、強い懸念を示し始めたことは、当然とはいえ、歓迎すべきことです。特に、フランスが率先して海洋分野における法の支配を重視する言動を取り始めたことは高く評価できます。伊勢志摩サミットの首脳宣言において、海洋秩序の維持のために国際法の諸原則に基づくルールを遵守することの重要性が強調されたことの意味は大きいものがあります。

強硬かつ独善的な態度

 その後のシンガポールのシャングリラ会議において、中国側の態度が強硬かつ独善的であったことが、関係諸国の間に中国に対する警戒感を一層高めることとなりました。

 ドイツも最近、これまで以上に中国の南シナ海進出に対し、警戒感を示すようになりました。これは、先日のメルケル・習近平会談においても見られた通りです。欧州はこれまで全体としてアジアから離れているという地理的要因に加え、経済関係を通じ中国との関係を強めてきたため、中国に対し、比較的微温的な対応をとってきました。しかし、ル・ドリアン仏国防大臣の指摘するように、南シナ海の問題はやがては、大西洋から北極に至る海域でも同様のことが起こり得ることを欧州の国々に想起させることとなりました。

 フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所の判決については、日本としては、あくまでも国際法、国際ルールに基づき対処するとの立場で、米、ASEAN諸国、EUと協力しつつ対処すべきです。日本にとっては、南シナ海が東シナ海、台湾海峡に隣接し、かつシーレーンにあたる戦略上の要衝の地であることに何ら変わりはありません。
 

  
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