世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月27日

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 ハリルザード元駐イラク米大使とドビンズ元アフガン担当米特使が、6月16日付ワシントン・ポスト紙にて、米はイランへの関与を強化するべきであるとして、オバマ政権が残任期間にイランとの外交関係設定、それが無理なら両国の利益代表をしている大使館への派遣外交官の格上げなどの措置を提言しています。要旨、次の通り。

 

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競争者とも協働すべき

 イランは地域の重要国であるが、近隣国には敵対的政策をとり、国内では国民を抑圧している。しかし、米国はイランに関与してこそ重要問題に対処し得る。冷戦中の対ソ政策同様、米国はイランに関与して、地域覇権を排し、地域に勢力均衡を作り出すべきである。

 中東情勢安定化のためには、米国はパートナーだけでなく、競争者とも協働すべきである。イランは中東の宗派的分極化と紛争の原因となってきたが、イランが唯一の原因というわけではない。米国とイランはシリアでは衝突しているが、アフガンとイラクでは同じ政府を支持している。

 米国は、有利なパワー・バランスを作り出すために、地域のパートナーと協力しなければならない。イラン核合意の下でイランの核兵器開発を阻止し、湾岸諸国の安全を保障するために米軍の展開と武器売却を続けなければならない。同時に、米は核合意の制限がなくなった時に、イランの核計画が再開されるのを阻止する計画を作り始めるべきである。そして、米国とパートナーは、イラクとシリアで、イランに対抗しなければならない。こうした努力は、イラン関与に際し、米国の立場を良くする。

 オバマ政権下で、イランとの接触は専ら核問題に焦点が当てられ、狭いものであった。ケリー国務長官とザリフ外相は電話ですぐに話せる間柄であったが、両者ともいずれは退任する。彼らの後任が同様の関係を維持する保証はない。

 オバマ大統領は、退任する前に両国のコミュニケーションを強化しておくべきである。最も明確な動きは外交関係の正常化だが、イラン政府がそこまで踏み込むか、明らかでないし、米国でも議論があろう。そこまでいかなくても、オバマ政権とイラン政府は、互いに利益を代表している大使館に中級の外交官を配し得る。もっと控え目な手段は、ニューヨークの国連代表部に派遣されるイラン外交官のワシントン立ち寄りを認めることである。こうしたジェスチャーに、イランも応じ、ドバイにある米イラン観察事務所の米外交官のイラン立ち寄りを許可しうる。

 米イラン間の関与は、ISに対する戦いに加え、地域の安定化も目指すべきである。米国は、サウジ、トルコ、イランがイラクとシリアについての共通理解に達するのを助け、宗派的紛争を抑えるウェストファリア条約のような合意を模索すべきである。そうした合意は、外部からの仲介者なしでは達成できない。現在、米国のみがその役割を果たし得る。

 それに加え、オバマは、より大きな自由と世界との接触を求めるイラン人の望みを無視すべきではない。関与の高まりには、必ず人権問題が含まれなければならない。米国は、学生、学者、一般市民の両国間の私的旅行も促進すべきである。その最良の方法は、両国間の民間航空の再開である。

 これらの措置が米イラン間の多くの困難を解決するというわけではない。コミュニケーションの改善は必ずしも和解に繋がらないが、より良い情報はより良い政策を可能にする。イランとの関与なしに中東が安定化されるとは思えない。

出典:Zalmay Khalilzad & James Dobbins,‘Before Obama leaves office, here’s what he should do about Iran’(Washington Post, June 16, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/how-to-break-the-ice-with-iran/2016/06/16/0c20b1c4-20fa-11e6-9e7f-57890b612299_story.html

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