世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月29日

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 6月24日付の英エコノミスト誌の社説は、国民投票によるEU離脱決定は、イギリスが自ら招いた愚かな事態で、イギリスは打撃を受け、今後有害な不確実性が長く続くだろうと述べています。その要旨は、以下の通りです。

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離脱がいつ実行されるのか誰も知らない

 6月24日早朝、イギリスが未知の世界に乗り出すことが明らかになった。直後のポンド大急落は、これから来る事態の一端を見せてくれた。イギリスが信用を落とし、不況に陥り、世界経済を揺るがす可能性がある。大半の有権者が残留に投票したスコットランドは、改めて連合王国からの解放を求める可能性があり、仏国民戦線等のEU懐疑派は今回の事態に勇気付けられよう。もちろん、EUは大打撃を受けた。今後は有害な不確実性が長期間続くだろう。離脱がいかなる条件でいつ実行されるのか誰も知らない。

 公共支出削減のあおりを受け、繁栄の恩恵に与れなかった大勢の有権者は、今や怒りのポピュリズムの支配下にある。彼らが挙げるEU拒絶の理由のうち決定的だったのは、人の自由な移動という側面だった。新たな移民が増えるにつれ、移民への懸念は高まった。

 そのため、離脱派は経済の活性化と移民の制御を約束したが、ただ投票しても、望む結果は得られない。EU単一市場へのアクセスとそれがもたらす富を享受したいのなら、人の移動の自由も受け入れねばならず、移動の自由を拒むのなら、単一市場からの排除という代償を払わねばならない。つまり、イギリスは移民の抑制と富の増大のどちらかを選ばねばならない。その選択は、新首相の任務だ。新首相は、ノルウェー方式、すなわちEU単一市場へのアクセスと共に人の自由な移動の原則も維持する方式を採るべきだ。理由は、繁栄の最大化につながるからだ。それに移民は実際にはイギリスの利益になる。欧州からの移民は結果的に公共財源に貢献している。それに、彼らがいなければ、学校や病院、そして農業や建築は人手不足になろう。

 離脱はEUにとっても重大な打撃だが、イギリスに限らず、EUは一般市民と遊離してしまった。ある調査によれば、フランスでEUに好意的な人は38%と、イギリスより6ポイントも低い。また、調査対象国すべてでEUへの権限委譲への支持は弱かった。各国は独自の反感をEUに抱いている。経済が弱体なイタリアやギリシャはドイツ主導の緊縮政策に憤っており、東欧諸国はEUが同性婚のようなコスモポリタン的価値を押し付けると非難する。

 こうした反感の解消のカギは成長の促進にある。デジタル・サービスを含む単一市場や資本市場の完成は、雇用と繁栄を生み出すだろう。また、ユーロ圏はまともな銀行同盟等の強力な土台が必要だ。各国政府への権限返還という永年の懸案を実行すれば、EUが権力の亡者ではないことが示されよう。

 今回の結果は非常に残念だ。また、離脱でイギリスは閉鎖性と孤立を強め、活力が弱まる危険性があると思っている。もしGreat BritainがLittle Englandに縮小すれば、全ての人にとって有害であり、これがさらにLittle Europeへとつながればもっと悪い。離脱派の指導者たちは、力強い外向きの21世紀経済を約束するが、離脱でそれを達成できるとは思えない。しかし、われわれの見方が間違っていたと証明されれば、これほど嬉しいことはない。

出 典:Economist ‘A tragic split’ (June 24, 2016)
http://www.economist.com/news/leaders/21701265-how-minimise-damage-britains-senseless-self-inflicted-blow-tragic-split

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