2024年4月20日(土)

WEDGE REPORT

2016年7月28日

 「絶対に名は出さないでくれ」

 台湾のシラスウナギ(ウナギの稚魚、以下シラス)輸出業者は我々取材班にそう告げた。なぜ名を出すことを頑(かたく)なに拒むのか──。それは彼に「罪」の自覚があるからである。

 日本人の好物であるウナギを巡って、台湾、香港、日本を舞台に壮大な「不正」が行われている。今回、取材班はその舞台である台湾、香港へと飛び、関係者らを取材した。

 取材のアポイントメントを入れるのにはかなり骨が折れた。当たり前だが話すメリットなどなく、誰も話したがらないからだ。だが、様々なコネクションを使って、交渉を続けた結果、匿名を条件に複数の人物が取材を受けてくれた。

2011年12月、台湾の桃園国際空港で香港行きの航空機に搭乗予定の乗客のスーツケースから押収された2万匹のシラス(写真・TAIWAN FISHERIES AGENCY)
2013年12月、台湾の宜蘭の沖合約13キロの地点で、海岸巡防署が漁船内から検挙したシラス24万匹余り(写真・TAIWAN FISHERIES AGENCY)

 台湾は2007年にシラスの輸出を禁止した。正確に言えば、台湾でシラスが採れる10月下旬~3月末とほぼ重なる11月~3月における輸出の禁止である。冒頭登場した台湾の業者は、シラスの密輸出に携わる人物である。

 「もちろん台湾でシラスの輸出が禁止されているのは知っている。だから色んな〝抜け道〟がある香港へまず運び、その後日本へ運ぶんだよ」

 台北市内のとあるホテルの一室で、台湾の輸出業者は身振り手振りを交えながら話をした。


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