WEDGE REPORT

2016年8月18日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 どんなビンテージワインも再生できる、しかも値段は1本50ドル。こんなコンセプトを打ち出す「ワイナリー」が登場し、話題となっている。サンフランシスコに今年創設されたアバ・ワイナリーは、ぶどうもイースト菌も使わずにワインを作り出す。その手法とは分子分析によるワインの再生、つまりクローニングだ。

アバ・ワイナリーのラボの様子(同社プレスキッドより)

クローニング技術

 ワイナリーの創業者、アレック・リー氏とマルドン・チュア氏はカナダのブリティッシュコロンビア大学で知り合った。リー氏はバイオテクノロジー専攻、チュア氏は分子生物学専攻。2人がワイン造りを思い立ったのは昨年のこと、1本1万ドル、というシャトー・モンテレナのシャルドネワインを目にしたことからだ。「このような値段のワインを自分達は買えない、でも成分を分析して全く同じワインを作ることは可能だ」と考えた。

 必要なのはアミノ酸、酸、砂糖、揮発性物質、エタノールのみ。これがワインの構成要素であり、対象となるワインのそれぞれの要素を分析、比率を全く同一にすることで理論的には同じ味のワインが生まれる。

 このアイデアに対し、ベンチャー投資家から250万ドルの融資が行われた。成功すればアメリカの、いや世界のワイン地図を書き換える「革命」となる。何せブドウ畑も醸造所も不要、研究室の中から高級ワインが生み出されるのだ。

 アバでは現在モスカート・ダスティ、ドンペリニョン、ピノ・ノワールの三種類のワインのクローニングに挑んでいる。すでにオンラインで予約注文を開始しており、最初の500本は今年の夏以降順次出荷予定だという。

 問題は研究室内で作られたクローニングワインを「ワイン」として販売することが認められるか、など主にライセンス系の障壁で、製品の完成については2人は絶大の自信を持っている、という。

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