2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月2日

 8月2日付のニューヨーク・タイムズ紙は、「リビアで、イスラム国(IS)との戦争の新しい前線」との社説を掲げ、8月1日より始まった米軍によるリビアのIS拠点への空爆を容認するとともに、米国内法である武力行使権限法の議論をすべきであると主張しています。同社説の論旨は、次の通りです。

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 米軍は、リビアのIS拠点への空爆を行った。リビア政府と連携しているリビアの戦闘員が、ISをシルテから追い出すのを助けるためである。リビア政治の混乱に鑑み、オバマ政権は軍事介入に消極的であった。しかし、ISがリビア沿岸部で地歩を迅速に固めていることを懸念してきた。最近、政府と連携している民兵組織がISより相当な領域を取り戻した。然し死傷者も多く出ており、リビアの首相、ファイーズ・サラージが米国に空爆を依頼した。

 米国には行動を起こすやむを得ない理由があった。リビアのISの基地は西側に攻撃を仕掛ける場所になりうる。それ以上にリビアでISが力を持てば、リビアで機能する国を作るのは困難になる。今回のIS戦争のエスカレーションの長期的な効果は不確実である。カダフィ追放に至った2011年の内戦では、空爆は戦場の状況を変えたが、米国もNATOも空爆後の包括的計画をもたず、リビアは無政府状態になった。

 リビアの安定化のためには国際社会の持続的な努力が必要である。最も緊急な課題は正統性のある治安部隊の樹立と民兵組織の解体である。新政府が権威を持つためには時間がかかるが、リビアは人口600万しかいない石油豊富な国である。安定化は達成可能な目標である。今回の空爆はISと戦う際の米国内法上の権限問題の議論が必要であることを示した。

 今オバマ政権は9・11テロへの報復を認めた2001年の法に依拠している。ホワイトハウスと議会が新しい権限法の内容に合意できないからである。クリントンの副大統領候補、ティム・ケインは新しい武力行使権限法の熱心な主張者であった。両党は選挙期間中にもこの件に態度を明らかにすべきである。

出 典:New York Times ‘In Libya, a New Front in the War on ISIS’ (August 2, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/08/03/opinion/in-libya-a-new-front-in-the-war-on-isis.html?_r=0


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