世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月28日

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、8月24日付社説で、今回のトルコ軍の対IS越境攻撃の真の目的は、シリアのクルド人武装勢力(YPG)のけん制にあるようだが、トルコにとってはYPGよりはISの脅威の方が大きい、と述べています。

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クルド人自治区は、ISやアサドよりましな選択肢

 トルコ軍は8月24日、米軍の空爆の支援を受け、シリア北部のジャラブルスに侵攻、トルコ国境のIS最後の拠点を占拠した。侵攻はトルコの都市ガジアンテップで、ISが自爆テロで54人を殺傷した直後に行われたが、侵攻の真の目的は米国が支援するYPGがジャラブルスを奪取する前にジャラブルスを占拠し、YPGの勢力拡大を阻止することにあったようである。

 エルドアンはYPGの母体のクルド民主統一党(PYD)がシリア北部でクルド人自治区を作ることを恐れているようであるが、トルコ国境外でのクルド人自治区はクルドの独立志向を和らげ、アラブの動乱への緩衝地帯の役目を果たす。シリアでのクルド人自治区は、ISやアサドに比べればより魅力的な選択肢であるはずである。

 トルコを訪問するバイデン副大統領は、トルコはYPGを敵として扱い、シリア北部にイラクのクルド人自治区のようなクルド人自治区を設置することに反対することで、得るものは無いことをエルドアンに伝えるべきである(注:この社説はバイデンのアンカラ到着前に書かれた)。イラクのクルド人自治区は中東では珍しい成功物語である。

 米国にとってシリアのクルド人自治区は、これまで米国の同盟として戦ってきたYPGに報いるとともに、シリアをクルド、アラウィ派、スンニの自治地域に分割するという筋書きに沿うものである。自治地域への分割という方式は1990年代半ばのボスニアでの戦争の終結の一助となったものであり、シリア内戦の終結に資する。

 エルドアンは、シリアの虐殺の余波がトルコに及ぶのを許容するよりは、クルドが勝利するのを助ける方が、失うものが少ないことを理解すべきである。

出典:‘Turkey Moves on Syria’(Wall Street Journal, August 24, 2016)
http://www.wsj.com/articles/turkey-moves-on-syria-1472078385

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