世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年10月17日

 米テキサス大学オースティン校リンドン・ジョンソン公共政策大学院のエイセンマンが、9月12日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載の論説で、習近平による鄧小平の改革開放路線に反する独裁的で規制強化的なやり方は、外国企業、外国NGOだけでなく、中国国内からの反発も招くことになるだろう、と分析しています。要旨、次の通り。

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習のアジェンダは自己矛盾している

 習近平は、2014年8月の鄧小平生誕100周年記念シンポジウムで、「我々は躊躇なく改革と開放を進めなければならない」と述べた。2013年の就任以来、習は、1978年に鄧小平が始めた、経済改革と国家再活性化のための改革を主張し続けていた。2年経ち、権力基盤の強化にもかかわらず、習の改革は官僚的障害と引き延ばしにより泥沼にはまっている。

 問題は、習のアジェンダが自己矛盾していることである。党の正統性との厳格な適合を求めつつ、改革の深化と法の支配を求めているが、これは、「開放無き改革」と呼びうるもので、結果に繋がっていない。

 反腐敗運動は多くの共産党の役員を失脚させてきたが、同運動は政治的動機に基づくもので習のライバルへの棍棒である、とエリートたちは受け取っている。影響を受け得る多くの人々が、熱が冷めるのを待ち、あるいは、自らの不正への捜査を妨害しようとしている。

 国民は、一旦は熱狂したが、汚職の規模に愕然としている。2013年には18万人、2014年には23万2000人、昨年は30万人が汚職により懲戒されたと推計されている。

 経済改革も手詰まりとなっている。上海自由貿易区は、外国企業からは時代遅れとして相手にされなくなり、通貨取引と資本市場の自由化も逆戻りしている。昨夏の株式市場大幅下落に対し当局は市場介入をしたが、一時的効果しかなく、かえって、投資を冷え込ませ、資本流出を悪化させた。人民元は対ドルで下落し、外貨保有高も2014年のピーク時から20%も減った。

 鄧小平が始めた「開放」は脅威にさらされている。「インターネット主権」などといって、インターネット、ソーシャルメディア上の情報の流れへの規制を強化し、反対意見をますます効果的に沈黙させるようになっている。この傾向は、年内に承認される予定の新たなサイバーセキュリティー法の下で続くことになろう。

 さらに、既に承認され来年1月に発効する予定のNGO規制法が、外国のNGOとの協力を治安当局の監視下に置かせ、協力を冷え込ませている。外国のNGOが中国のNGOと協力することはこれまでになく困難になっている。

 規制強化は他にもある。テロ対策法は、外国のIT企業にセンシティブなデータの中国政府への提出を義務付ける。外国人のビザ発給申請手続きはより煩雑になった。公的報道機関における、反西側、反自由主義、反日の攻撃も増大している。「センシティブ」という言葉が、学術的会議で不都合な話題の排除に使われている。

 独裁的な手法と毛沢東時代の戦術が改革推進に用いられていることも、前進を妨げている。習は、「草の根レベルでの厳格な党運営」「党員のマルクス主義者としての立場を強化し、党全体がイデオロギー及び政治的一貫性を維持すること」を目指し、共産党の全部門、全党員に対し、自らの演説を勉強する通年の政治キャンペーンを強制しようとしている。しかし、今や、毛沢東時代ではない。多くの地方の党幹部が、無視したり陰で嘲笑したりしている。

 熱狂が衰え障害が高まるにつれ、習の反腐敗運動に駆動されてきた改革戦略の勢いは止みつつある。多くの中国人が、中国の台頭は「開放」と効果的な改革を通じてのみ継続できると今でも信じているが、中国の現在の戦略はその路線に反しており、政治的な動機が政策を動かしていた時代を想起させる。中国政府は、強まる敵意とナショナリズムの中で理不尽に規制されていると感じる外国の企業やNGOのみならず、共産党員や国内の既得権益者からの怒りと反発を刺激し続けることになろう。

出典:Joshua Eisenman,‘How Xi Jinping Undermines China’s Reforms’(Wall Street Journal, September 12, 2016)
http://www.wsj.com/articles/how-xi-jinping-undermines-chinas-reforms-1473701211

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