世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年10月25日

»著者プロフィール

 中国の国際協調派の代表格である北京大学国際研究学院院長王緝が、China US focusに9月19日付けで掲載された論説で、米中関係の本質と難しさを指摘しています。論旨、次の通り。

3つの脆弱性とリスク

iStock

 中米関係は徐々に成熟しているが、依然として脆弱であり、戦略的判断ミスのリスクを孕んでいる。脆弱性とリスクは三点にまとめられる。

 1)経済や貿易、文化、グローバルガバナンス面では相互協力は深化。だが、アジア太平洋地域の安全保障面では、戦略的競争が高まっている。

 2)メディアは、戦略的な競争の側面をポジティブなニュースよりも多く取り上げ、ソーシャルメディアが普及したことにより、大衆の関心を高めている。

 3)多くの中国人にとって、米国は最大の戦略的脅威であり、容易に米国も中国を同様に脅威と見なしていると考えてしまう。中国の台頭は米国が世界で直面している大きな挑戦のうちの一つに過ぎない。長期的には、米国が中国を最大の戦略的脅威とみなすことを防止することが中国の対米政策の目標となるべきである。

 中米関係は「新常態」に入った。競争と協力の双方が同時に大きくなり、国内要因が外交に大きな影響を与えるようになった状態である。しかし、だからと言って、中米関係が「量的変化から質的変化へと変わった」、「負のスパイラルに入った」などと結論づけるのは間違っている。
多くの分野において、中米は同じルールを堅持している。だが、新常態においては、原則やルールをめぐる争いが中米対立の焦点となり始めている。政治面において、中国は「国際関係の民主化」を支持している。それは国際システムの中での国レベルでの民主化である。一方米国は「リベラル国際秩序」を支持し、「世界の民主化」を推し進めている。これは個人の自由と権利に関するものであり、両者は異なる考え方である。

 経済面において、米国は国有企業の制限、労働基準の向上、情報の自由化、環境の保護、知的財産権の保護などの国際ルールの強化を目指している。しかし、国有企業の制限など一部のルールは中国にとって受け入れられないものである。米国がやろうとしているのは、中国の国内および対外経済政策を統制し、米国のみが得をするルールを作り守ろうとしていることである。両国の経済モデルの不一致はかつてよりも大きな障害となっている。

 国際安全保障面において、中国の人たちは南シナ海を「先祖伝来の自分の海」だと考えている。南シナ海は中国の主権、領土保全に直結する問題だと考えている。それに対して米国は南シナ海が国際的な海であり、国際法に基づく航行の自由があると主張する。地政学的な闘争が論争の背後に隠れている。サイバーに関しても両国の焦点はずれている。

 新常態においては何がなされるべきなのだろうか。筆者(王)はかつて2012年にリバソールとの共著で“中米戦略的不信”に関する報告書を執筆している。その中で、政府、シンクタンク、市民社会が対話をし、相互疑念を緩和すべきだと論じた。しかし、4年経った今日、互いに対する疑念や不信は緩和されるどころかより増幅され、深刻になっている。戦略的相互不信の増大は中米関係の新常態に埋め込まれているようである。

 2012年の報告において、相互不信を緩和する手段が有効でない場合でも、両国の指導者は、相手の長期的な意図に関する深い不信の下で、それでもなお、協力を最大化し、緊張と対立を最小化しなければならないと結論した。新常態において、両国は自らの国民に対して、対立を回避し、協力を追求するという戦略的な意図を明らかにすることに努めなければならない。それは両国政府が幾度となく互いに確認したことであり、混乱した世論の干渉を抑え、国内の政治的な合意を形成することにつながる。

 キッシンジャーは『中国』という本の中で、中米両国が「共進化(co-evolution)」の関係を築くべきだと提案している。筆者は、「共進化」は「平和的な競争」をも意味していると考える。どちらがより国内問題を上手く処理し、国民を満足させられるかというのが最も意味のある競争である。

出典:Wang Jisi,‘China-U.S. Relations Have Entered A “New Normal”’(China US focus, September 19, 2016)
http://www.chinausfocus.com/foreign-policy/china-u-s-relations-have-entered-a-new-normal/

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る