WEDGE REPORT

2016年10月31日

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 政府が、「農協版総合商社」と呼ばれる全農(全国農業協同組合連合会)に株式会社への転換を迫ることを全農の「株式会社化」問題と呼ぶ。

 数々の既得権をもつ協同組合の全農が株式会社になれば、競争原理が働き、農家の所得が向上する。これが政府の言い分であり、世間の常識。一方の全農は株式会社化に反対。表向きは、農家の所得向上に逆行するという説明だが、この言い分には説得力がない。

7月に佐賀県を訪れ、農家の生産現場などを視察した自民党の小泉進次郎農林部会長(右から2人目)と全農の中野吉實会長(同3人目)
(写真・THE ASAHI SHIMBUN/GETTYIMAGES)

 協同組合では競争原理が働かないことは、全農が農協を通じて農家に提供する肥料、農薬、農業機械など生産資材の価格が、肥料農薬商やホームセンターなどの競争相手より割高であることが証明している。株式会社になって競争原理を取り入れた方が価格を下げることができる。

 自民党農林部会長として、この問題にメスを入れた小泉進次郎氏は、全農が農協に供給する生産資材が高いことを次のように説明していた。

 「農薬の価格差、農協内で最大2倍 小泉氏『調査が必要』」(3月30日、朝日新聞)

 いかにも小泉氏らしい。農協によって価格がまちまちであることは事実だが、これほどの開きがあるのは数えるほど。高いといっても、競争相手よりも1、2割程度。競争が激しい地域の農協には割安で供給、そうでない地域の農協には割高で供給するので価格差が起きる。この「差別商法」こそ、全農がもっとも知られたくない点だろう。

 不思議なことに、この「差別商法」が農協組織内部で問題になったことはない。全農の巧妙な情報操作もある。「全農は都合のよい情報ばかり流してくる」(東北地区の農協組合長)という声をたまに聞く。

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