2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2016年10月31日

三井物産並の事業規模誇る全農の実態

 全農は、全国700農協などが出資して結成した組合だ。経営管理委員会と理事会がある。組織を代表するのは、出資側の理事会。

 経営管理委員は、農協の代表から選ばれ、非常勤だ。実質、組織を運営するのは、日常業務に精通する常勤の生え抜き職員で、彼らが会社の取締役会に相当する理事会メンバーとなり重要事項を決定する。その理事会を経営管理委員会が監督するというのは教科書的解説。多くの経営管理委員は、財務諸表も満足に読めないお飾り的な存在だ。

 小泉氏が暴露した農協間の価格差問題も、経営管理委員会で議論になっていても不思議ではないはずだが、そういう議論があったことは伝わってこない。これこそ全農という組織の特殊性だ。経営管理委員の質に問題がある。定員20人のうち15人が農協組合長などから選抜される。その多くは名誉職という意識が強い。小泉氏が指摘しても、自分たちも同じように攻撃されたと思い、全農理事会の説明をそのまま受け入れてしまうようだ。

 割高な資材を押しつけられている全国700農協の農協組合長全員が同じ穴の狢(むじな)かといえば、必ずしもそうではなさそうだ。それは全農離れという動きで裏付けられる。

 全農離れは作物と地域で起きる。主な売り先を全農に頼る作物、例えば米麦地帯は全農離れが起きにくい。全農に頼らない野菜地帯は、全農離れが起きやすい。茨城、千葉両県の利根川流域は、日本有数の野菜産地。肥料や農薬で「農協さんは、6割ぐらいのシェア。米地帯の東北や北陸なら7割から8割かな」(茨城県西部のライバル業者)という。

 農協が、生産資材のすべてを全農から調達していると思われがちだが、実態はそうではないのだ。農協が全農を利用するのは、農水省統計でほぼ7割程度。そのシェアは漸減(ぜんげん)傾向にある。全農から供給を受ける生産資材を農家に販売していたのでは、競争に負けてしまうので、全農の競争相手となるメーカーや商社などからの調達を増やしているのだ。


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