世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年11月21日

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 キース・ペイン(元米国防次官補代理)とフランクリン・ミラー(元米国防総省・NSC職員)が連名で、10月14日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙に、米国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)撤廃と“核の先制不使用”(no-first-use以下NFU)政策の宣言は海外の敵を大胆にさせる、との論説を寄せ、これらの提案を批判しています。論旨、次の通りです。

敵の挑発を奨励することになる

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 ホワイトハウスは6月、オバマの核軍縮目標を推進する新イニシアチブを検討中と発表した。米国は冷戦終了後すでに配備核戦力を約80%減らしたのに、この発表はNFUやICBM撤廃を含む多くの提案を喚起した。

 この二つの提案は反核運動家やペリー元国防長官など元高官によって推進されている。しかしその採用は敵の挑発を奨励し、大規模戦争を抑止する力を減退させ、欧亜の同盟国の安全保障を弱め、核の拡散につながる。これまでの大統領が70年間、このNFU宣言に反対してきた。
NFUを採用すべしと言う人は、その拒絶はfirst-useを許容することであると言う。しかし、NFUかfirst-useしかないと言うのは間違いである。第3の選択肢、核使用について曖昧さを残すと言う現政策がある。

 この曖昧さが敵に通常兵力による大規模攻撃、または化学・生物兵器攻撃に対しても、米の核兵器使用がありうることを考慮させ、攻撃の抑止に役立つ。イラク軍情報部元長官は、湾岸戦争時サダム・フセインが化学・生物兵器を使わなかったのは、「警告に効果があり、核兵器で報復されるのを確実と思い、その代価は高すぎると思ったからである」と述べている。

 核抑止力のない時代、欧州の大国はよく戦争をした。第一次大戦の破局も第二次大戦を抑止しなかった。しかし1945年後70年間、核抑止力がそのサイクルを止めた。

 NFUは敵に、化学・生物兵器を含む大規模兵力を米国の抑止力を回避して使う道を与える。ロシアと中国が中欧とアジアで拡張している今、特に危険である。ロシア、北朝鮮、中国の脅威を受けている同盟国はNFUに反対を表明している。NFUはこれらの同盟国が自分の抑止力を持つことを考慮させる。現にいま核能力について韓国では議論がなされている。米国の方針変更は韓国の核武装、それに伴う核拡散を引き起こしかねない。

 ICBM撤廃案も良くない。反核運動家は、ICBMはすぐに「引き金」を引ける状態にあり、第三次大戦につながりかねない、と言う。しかしICBMがあるから、爆撃機や潜水艦を第1撃で壊しても抑止力が残る。ICBMがなければ、潜水艦と爆撃機に焦点を合わせた戦略を可能にする。400機のICBMがあれば、敵は破壊的な反応を予期せざるを得ず、これが抑止になる。ICBMの経費は国防費の1%以下である。

 米国のICBMは「すぐ発射できる状態」にはない。1990年代に他の核兵器国と、ミサイルのガイダンス・コンピューターにおける目標を本当の目標ではなく、海洋のある領域とするとの合意がある。米国はこれを今も行っている。

 NFUとICBM撤廃はこれらの現実世界の考慮を欠く無邪気な提案である。

出典:Keith B. Payne & Franklin C. Miller,‘Naive Nuclear Proposals for a Dangerous World’(Wall Street Journal, October 14, 2016)
http://www.wsj.com/articles/naive-nuclear-proposals-for-a-dangerous-world-1476484967

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