2024年11月16日(土)

Wedge REPORT

2016年11月27日

 “保活”中の保護者は保育園見学の真っ最中というシーズン。12月下旬には来年4月の保育園の入園申し込みが締め切りとなる自治体が多い。申請を前に、同じ認可保育園とはいっても、運営母体が公立なのか、私立なのか。私立でも、社会福祉法人なのか株式会社なのか、それによって特徴はさまざま。さらに、保育園は園長の意向が強く保育に反映され、園長が代わることでまるで違ってしまうことが珍しくない。待機児童の多さから、「とにかく入園できればいい」と思いがちだが、入った後で「もっとよく確認して希望順を書いておけば良かった」と悔やむ例は少なくない。保育の質の低下に警鐘を鳴らした『ルポ保育崩壊』(2015年、岩波書店)など、これまでの取材から、考え得る見学の際のチェックポイントを解説したい。

①見学を指定された時間帯に園児や園長はいるか

 「普段の保育の様子を見たい」と言って見学を申し込んだにもかかわらず、いざ行ってみると子どもたちがお散歩に出ていて誰もいない、午睡(お昼寝)の時間帯を指定されるなど、拍子抜けするケースがある。保育園側は「静かなほうが説明しやすいから」「人手の都合で午睡の時間帯がいい」と説明することがあるが、実際は、「良い保育をしていないから見せられない」ということも少なくない。見学者が来た時だけ「言葉遣いと姿勢に気を付けて」と園内で内線を回しているケースもある。待機児童が多い中、入園希望者が減って定員割れでもすれば保育園側にとって大問題だ。

 また、案内も10~15分ほどであっさりと終わってしまい、食事の様子を見たいといっても「また予約し直してください」と言われることもある。きちんと保育の様子を見ることができない、柔軟な対応ができない保育園は後々、実際に預けてからも運営が硬直的で親子がストレスを抱えることになる。きちんと時間をかけて実際の保育を見ながら説明してくれるかが重要だ。また、保育園は園長次第で、その色に染められがち。園長が在席しているにも関わらず挨拶も説明も全くないケースも、“面倒なこと”や保護者対応が主任や担任に丸投げで保護者との意思疎通が図られず、一方的な保育が押し付けられトラブルになるケースが見られる。

②延長保育の利用方法

 保護者の労働環境が厳しいなか、育児短時間勤務や残業せず定時でお迎えに行くことができる保護者は決して多くはない。ワークライフバランスが実現されるかは職場の理解によるため、延長保育の有無や運用方法は、職場復帰後に大きな影響を与える。

 育児・介護休業法によって「短時間勤務制度」を設けられ、3歳に満たない子のいる社員(日々雇用でないことが条件)が希望すれば、1日の労働時間を6時間にしなければならないが、実際に全員が利用しているわけではないのが現状だ。厚生労働省の「平成27年度雇用均等基本調査」によれば、育児のための「短時間勤務制度」が「ある」企業は57.8%で、うち最長利用可能期間が最も多いのが「3歳に達するまで」(59.7%)で「小学校就学の始期に達するまで」は19.8%に留まる。国立社会保障・人口問題研究所の「第15回出生動向基本調査」(2015年実施)でも、「育児時間制度・育児短時間勤務制度」を利用した女性は、わずか7.1%だ。

 雇用環境が厳しければ、親の立場でワークライフバランスを図ろうと思えばクビになる、あるいは左遷されることもある。延長保育の申し込みが年度初めに一括なのか、月ごとか、週ごとか、日々の受付が可能かなどを事前に知っておく必要がある。なかには、入園の申請書類に残業や土曜出勤について書類に書かれていないと、その後に働き方が変わっても延長保育や土曜保育を実施してもらえないケースもある。そのため「公立保育所に預けられても、延長保育時間帯や土曜は民間の一時保育を利用して二重保育になった」(都内の女性)というケースも散見される。

 夕食が出るか出ないかも生活を一変させる。夜8時まで延長保育を実施していても夕食が出ない保育園もあり、それまで子どもがお腹を空かせて待っていることになる。帰宅してから料理をするのでは食事も睡眠時刻も遅くなるからと総菜や外食頼みになりがちだ。


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