チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年11月30日

»著者プロフィール
著者
閉じる

小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団特任研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

中ロ間のパワー・バランスに関わる軍事技術

 しかし中国には、メンツにこだわっている時間はない。少なくとも2隻の建造中の空母を運用する準備を進めなければならないのだ。その準備の中でも最も難しいのが、空母艦載機部隊の養成である。艦載機となる機体すらないのでは、訓練どころの話ではない。中国は、早急にロシアに援助を求めなければならないだろう。

 ロシアは、これも違法コピーを理由に渋っていた、中国に対するSu-35の輸出に同意し、2015年11月、24機の同機を中国に輸出する契約を結んでいる。ロシアが気にしていたのは、中国が戦闘機を違法コピーしてロシアに金を落とさないことである。24機というまとまった機数の契約であったので、ということはある程度の金額の契約になったので、ロシア側も中国の要望に応じたということだろう。Su-33にしても、中国が違法コピーを認めて金を積めば、ロシアは技術支援するということでもある。

 J-15の問題は、それで解決できるかもしれない。しかし、外国から武器装備品を導入するということは、輸入元の国と常に良好な関係を維持していなければならないということである。しかも、輸入元の国の意図次第で、いつでも輸出を止められる可能性がある。理不尽だろうが何だろうが、その理由などいくらでもつけられる。

 この意味においても、中国にとってロシアとの関係は、常に頭の痛い問題である。いくら信頼できないからと言って、あからさまにロシアを不愉快にさせられないのだ。中国が自国で高性能戦闘機の開発・製造ができるようになれば、中ロ間のパワー・バランスに変化が生まれる。「その行使がなければ採らないであろう行為を相手に採らせる力」が「パワー」であることを考えれば、中国が自国開発できない軍事技術は、ロシアにとって、正にパワーの重要な構成要素であるのだ。

戦闘機としての飛行能力に問題ありか

 もちろん、米国という共通の敵がいる限り、中ロ両国は、なにがしかの形で協力しなければならないが、ロシアは、中国に言うことを聞かせる切り札を1枚失うことになる。実際のところ、中国は、軍事技術供与というロシアのくびきからのがれることができるのだろうか。

 どうも、そう簡単にはいかないようだ。2011年に初めての試験飛行に成功し、その動画を流出させてその存在を明らかにして以降も、J-20の開発は順調に進んできたように見えない。特に中国が技術的に弱いのが、高性能航空エンジンである。先に述べた、空母艦載機J-15の最大の欠点もエンジンであると言われる。自国開発できないために、ロシアから購入したSu-27等に用いるためのエンジンを拝借しているという。

関連記事

新着記事

»もっと見る