チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年11月30日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

最新技術や最高速力にこだわる中国

 そもそも、全ての戦闘機にステルス性能が求められるかどうかも考えなければならない。ステルス性能とは、簡単に言えば見つかりにくい能力のことである。レーダー波が反射しにくい機体の外形や電波を吸収する塗装などによって、主として敵のレーダーに探知されないことを目的としている。しかし、このステルス性が第5世代の戦闘機の条件であると定義されている訳ではない。実のところ、ステルス性だけでなく、どのような性能を持てば第5世代なのかという明確な定義はないのだ。

 2015年2月、米海軍作戦部長のグリナード大将(当時)は、海軍の次期戦闘機にはステルス性も過度の高速飛行能力も必要ないと述べている。レーダーの性能がますます高くなる中で、全く探知されない航空機は存在しない。さらに、航空機は、エンジンを回さなければ飛ぶことはできず、どんなに抑え込んでも熱は発する。センサー技術は、航空機技術と同様に、著しく進歩しているのだ。さらに、ミサイルを速度で振り切ることができる戦闘機の開発も難しい。

 しかし、米海軍はすでにステルス性を有するF-35の導入を決めている。グリナード作戦部長の発言と矛盾していると思われるかも知れないが、海軍は、F-35を、前方に展開するセンサー・ノードとして使用することを考えているようだ。

 空母打撃群が展開する、いわゆるNIFC-CA (Naval Integrated Fire Control Counter Air)コンセプトの一部として使用するということである。どのような目的でどのように使用するかによって、航空機に求められる性能は異なるのだ。

 ならば、米海軍が考える戦闘機の必要条件とは何か。それは、武器・弾薬の搭載量が大きいことである。戦闘機に求められるのは、航空優勢の確保である。そのためには、搭載する武器・弾薬が多いに越したことはない。大きな機体が必要なのだ。米海軍は、次期戦闘機F/A-XXを、2030年にF/A-18E/Fスーパーホーネットの後継機として採用する予定である。

 米海軍は、武器装備品に関する技術の推移と、技術発展による戦闘様相の変化を踏まえ、自らのオペレーションのために、どのような戦闘機が必要となるのかを考えている。むやみに、ステルス性能や無駄な高速飛行性能を追求することに意味はないのだ。戦闘機の速度にしても、以前は米ソの間で「最高速力」が競われたが、現在では、瞬間の最高速力ではなく、巡航時の超音速飛行の方が重要であると考えられている。

 航空機だけでなく、レーダー等のセンサーを含む武器装備品の在り方は、時代とともに変化するのである。中国は、一般的に、最新技術や最高速力等にこだわりがちだ。それは、自らが遅れているというコンプレックスの現れでもある。もし、中国が、戦闘様相の変化や自らの作戦行動を分析することなく、最新技術や性能要目だけを追求すれば、永遠に米国に追いつくことはできないだろう。

  
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