世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月8日

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 トランプ陣営アドバイザーのグレイ(ランディ・フォーブス上院議員の元上級顧問)とナヴァロ(カリフォルニア州立大学教授)が、Foreign Policy誌ウェブサイトに11月7日付けで掲載された論説で、トランプのアジア政策を説明し、経済利益を安保のために犠牲にしない、米軍の増強を図る、同盟国の負担の増大を求める等と述べています。要旨、次の通り。

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 オバマのリバランス政策は正しかったが、大げさに言うだけで鞭は小さなものでしかなかった。中国は軍の近代化や対米貿易黒字などの結果、力を顕示するようになった。オバマのリバランス政策は腰砕けになった。艦船のシンガポール派遣等見せかけのジェスチャーしか取らず、政権は国防予算を大幅に削減、米軍、特にピボットの尖兵となる海軍も削減された。

 リバランスの核心として政権が重視するのは軍事力ではなく、TPPということになった。TPPが中国封じ込めの手段となった。国防長官は、TPPは空母一隻分の重要性を持つと述べた。

 米国が軍事力を削減するなか中国は南シナ海に人工島の建設を進めた。それに対し米国は極めて限定的な対応しかしなかった。中国は一方的に防空識別圏を設定し、国内では人権抑圧を強めた。クリントンはピボット政策の弱いフォローしかせず、北朝鮮に対しては大失敗の「戦略的忍耐政策」を取り続けた。北朝鮮は米西海岸に到達するミサイルを開発している。

 フィリピンの対中接近はオバマ・クリントン外交のもう一つの失敗だ。オバマ政権は12年の中国によるスカボロー礁支配にも介入しようとはしなかった。オバマの悪名高いシリアに関するレッドライン公約の顛末はアジア太平洋での米のコミットメントの信頼に疑念を惹起することになった。

 タイの政府は米国から冷たくされ、中国との関係を強化している。オバマ政権は台湾が必要とする武器の提供を拒んできた。幸いなことに日本、韓国、インド、越などは対米関係を強めている。次期政権はこれらの国との戦略関係を更に強化することができる。

 トランプのアプローチは二本の柱からなる。第一に、外交のために経済を犠牲にしない。NAFTAや中国のWTO加盟許容、TPPの承認のようなことを今後することはない。第二に、トランプは、レーガンの「力を通じる平和戦略」を追求する。オバマ政権の下で海軍は第一次大戦以来最も縮小した。陸軍、空軍も同様に縮小した。トランプは国防費の強制削減の撤回のため議会と協議する。

 日韓などの経済力を考えれば、米軍経費負担の増大は正当なことだ。アジアでの同盟関係へのトランプのコミットメントに疑いはない。トランプは日韓や欧州諸国と負担につき協議をしたいと考えている。

 トランプはアジアその他の地域での外交が成功するためには必要なことを明確に理解している。基本となるのは、力を維持し、 大統領の述べることは実行されると同盟国、敵対国双方に信じさせることだ。トランプ政権になればアジア太平洋は格段に安定するだろう。それは米や同盟国の国益に資することだ。

出典:Alexander Gray & Peter Navarro,‘Donald Trump’s Peace Through Strength Vision for the Asia-Pacific’(Foreign Policy, November 7, 2016)
http://foreignpolicy.com/2016/11/07/donald-trumps-peace-through-strength-vision-for-the-asia-pacific/

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