世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年11月28日

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 ポーランドの欧州担当大臣シマンスキーが、10月21日付の英フィナンシャル・タイムズ紙に論説を寄せ、「ロシアのガスパイプラインは欧州の団結を脅かす」と、ノルドストリーム2に反対しています。論旨は、次の通りです。

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ロシア、ドイツを結ぶ海底パイプライン

 8月、Eon、Engie、OMV、シェル、ウィンターシャルの西側各社は、ノルドストリーム2に参加しないと決定した。ロシアのガスプロム主導のコンソーシアムは、ロシアとドイツの間の2本の海底ガスパイプラインを建設、運用するために作られた。これらの会社は、ポーランドの競争保護当局に出されていた合併承認申請も取り下げた。ポーランド政府は、これまで、これがポーランド、EUのガス市場に与える影響について懸念を表明してきた。

 ポーランドは、チェコ、エストニア、クロアチア、ハンガリー、リトアニア、ラトビア、ルーマニア、スロバキアなどとともに、2015年の発表当初からノルドストリーム2に反対してきた。ノルドストリーム2の経済的理由付けは、ロシアからEUへの現在の供給ルートが過剰能力であることを考慮すれば、常に疑問であった。このプロジェクトは、欧州のロシアのガスへの依存を深め、ウクライナに与える損害も考慮すると、ロシアの政治的動機は明らかである。西側の会社の脱退で、ノルドストリーム2への反対論はより強化されよう。このプロジェクトは今や、EU内の政治関係を害するトロイの馬に見える。

 EU諸機関は、ノルドストリームに確固たる態度をとってこなかった。ユンケル委員長は「法的解決」を言うが、何も出て来ていない。不法なクリミア併合に対してロシアに制裁を課していること、ガスプロムはロシアの国有会社であることに鑑み、EU諸機関のあいまいな態度は説明困難である。侵略を制裁で罰しようとする一方、その政権のプロジェクトを支援するのは矛盾している。EUはウクライナに金融援助をし、対ロ制裁を維持し、エネルギー連合を呼びかけながら、同時にノルドストリーム2に協力することはできない。

 EU委員会は、最も脆弱な加盟国が外部の独占の圧力から保護されるように保障すべきである。プロジェクトを完全に凍結するのが無理なら、少なくとも欧州のガス市場や供給の安全への破壊的影響を制約すべきである。

 ノルドストリーム2は、ヨーロッパ団結とEU諸機関の信頼性のテストである。ポーランドはEU裁判所に提訴することを含め、EUの基本原則を守る決意である。このプロジェクトへの加盟国による支持、委員会のこのプロジェクトへの優遇措置付与を、ポーランドその他の国は必要があれば司法の場で問題にする。もしEU諸機関の権限がはっきりしないのなら、ポーランドなどは裁判を通じ明確にする用意がある。

 他の加盟国の安全保障と安定を犠牲にして、ある加盟国の経済的利益を推進するのはEUが陥っている危機を逃れる道ではない。EU市民にEU諸制度への信頼を強めるものでもない。EU全体の利益のために短期的な個別利得は放棄されるべきである。

出 典:Konrad Szymanski ‘Russia’s gas pipeline threatens European unity’(Financial Times, October 21, 2016)
https://www.ft.com/content/25a17928-96c3-11e6-a1dc-bdf38d484582

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