世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月14日

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 11月11日付のウォールストリート・ジャーナル社説は、トランプは保護主義的大統領であり、TPPの失敗は大きな経済的コストを伴うことになるだろうと、トランプの政策を批判しています。主要点は次の通りです。

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 オバマ政権は11日ついにTPPの議会通過を断念した。これが新たな貿易戦争の幕開けにならないことを祈りたい。TPPを議会承認に持ち込めなかったのはトランプ、クリントン両候補が反グローバリズムの感情を煽ったことが唯一の理由ではない。TPPの規定の中に労働、環境など余りに多くの非貿易規定が含まれていたため、自由貿易主義者が賛成しかねたこともある。

 ポピュリズムが高まっている時に政治を冷静に行うのは大統領のリーダーシップしかない。しかし、オバマは左右からTPP反対が叫ばれているのを傍観した。長年行ってきていた交渉を選挙の年にまとめたのは政治的にも無謀だった。

 TPPの失敗により、米国はベトナムやマレーシアなど貿易・投資障壁の高い国々の自由化を促す機会を失う。これら諸国への米国の輸出は伸びたであろうし、長期的に米国の競争力は改善し、輸出拡大は成長に貢献したに違いない。

 戦略的損害はより大きい。TPPは中国の影響力の増大に対抗するという地政学上の意味もあった。今や中国は二国間協定や地域協定を作っていくだろう。専制国家はそれぞれの地域で米国にとって代わろうとしている。トランプはそのような懸念すべき趨勢下で、力を試されるだろう。
TPPの瓦解は安倍総理にとっては痛手である。安倍総理はTPPを経済改革政策の中心に据えていた。

 トランプは、減税等の成長戦略と保護主義的姿勢の間にある矛盾を解決せねばならない。アンチ・ダンピング課税を課すとか現行のTPPにつき小さな変更を加えるといった措置で満足するかもしれない。しかしトランプは、自分は自由貿易主義者だが、最近の貿易協定は労働者や企業を傷つけてきたと言う。そうであればトランプは、日本や英国と二国間貿易交渉を開始することによって自分は自由貿易主義者だということを証明できるかもしれない。

 市場はトランプの成長戦略に期待して上昇に転じている。しかし、TPPの失敗は、トランプが1920年代以降最初の正真正銘の保護主義的大統領であり、それは大きな経済コストを伴うことを思い知らせることになるだろう。

出 典:Wall Street Journal ‘Pacific Trade Bust’(November, 11, 2016)
http://www.wsj.com/articles/pacific-trade-bust-1478908943

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