WEDGE REPORT

2016年12月16日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

 トランプ氏が米国次期大統領に決まって以来、日米の株価が大幅に上昇、ニューヨークのダウ平均株価は年内にも2万㌦達成、日経平均は年明けにも2万円台乗せをはやす楽観論が市場に漂い始めている。しかし、これはトランプ政権が打ち出す予定の法人税減税、インフラ整備を中心とした公共事業などの景気対策への期待感から値上がりしているだけで、実体経済はまだ様子見の段階だ。経済的な裏付けのない「トランプ相場」に浮かれていると、期待が失望に変わり思わぬしっぺ返しを食うことになりかねない。 

長期金利が急上昇

iStock

 トランプ氏の大統領選挙での勝利決定により株高、長期金利高、ドル高の「トリプル高」となり、トランプ次期政権への期待が高まり、その経済政策は早くも「トランポノミックス」と呼ばれて、ウォール街では好感を持たれている。選挙期間中はトランプ氏がウォール街に対して批判的言動をしたため、金融・証券界から警戒感があったが、その後、主要な閣僚人事にウォール街の実力者を起用するなどしたため安心感が広がり、ニューヨーク株価は選挙後の2週間で4%以上値上がりして1万9000ドル台を記録、史上最高値を更新している。

 日本の株価もニューヨーク株価につられて値上がりしているが、けん引しているのは12月15日には約10カ月ぶりで一時1ドル=117円台まで円安に振れた為替相場だ。しかし、ここで見逃してはならないのは、米国金利に連動する形で日本の長期金利が上がっていることだ。日本の長期金利(10年)は日銀のマイナス金利政策により、9月末にはマイナス0.09%付近だったが、大統領選挙でトランプ氏の勝利が決まってから上昇に転じ、直近の13日には一時0.080%にまで急騰している。

 この流れを受けて、みずほ銀行は12月初めに10年~35年の固定金利を12月から0.08~0・09%幅引き上げた。三井住友銀行は同じ期間のを0.12%幅、三菱東京UFJ銀行は15年以上のを0.05~0.12%幅それぞれ引き上げた。住宅ローン金利が上昇すれば住宅購入需要を冷やす可能性もあり景気にはマイナスに働く。

原油高が追い打ちに

 さらに急ピッチな円安ドル高は、食料や燃料などの輸入物価を押し上げる。中でも原油は石油輸出国機構(OPEC)が11月30日にウィーンで開催した総会で減産に合意したことから大幅に上昇し、1バレル=50㌦台に乗せてきている。OPECが減産で合意したのは08年以来だが、今回はロシアなど非OPEC諸国も足並みをそろえているので、需給を締める効果がある。これはガソリンに加えて、冬場の需要シーズンを迎えた灯油の国内販売価格の値上げにつながる。

 円高、原油安でこの数年間は燃料を安く調達できていた電力各社は、円安、原油高が今後加速すれば、燃料コストの上昇でいまの電気料金を維持できなくなる恐れもある。電気料金が上がれば、企業、家庭にとって痛手になる。特に企業が生産用に使う電気料金は高い水準にある。これ以上、電気料金が上がると電気を多く使う製品を生産している企業は国際的競争力を失う恐れがあり、海外に生産拠点を移設する動きを加速させることになりかねない。

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