中東を読み解く

2016年12月21日

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 欧州で懸念が高まっていたテロが19日ドイツで起きた。首都ベルリン中心部の「クリスマス市」にトラックが突っ込み、12人が死亡、約50人が重軽傷を負った。86人の犠牲者を出した7月の仏ニースでの事件と同様、「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。トルコではロシア大使が暗殺される事件も起き、世界は再び過激派のテロに揺れている。

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ISへの呼応テロか

 ドイツではクリスマス時期になると、ツリーの飾りや菓子、名物のホットワインなどを販売する屋台が並ぶクリスマス市が盛んで、ベルリンには数十カ所もある。今回、トラックが突っ込んだのは、第2次大戦の記念碑としても有名なカイザー・ウイルヘルム教会の近くのクリスマス市だった。
 
 目撃者らによると、トラックはライトを消したままでクリスマス市を楽しんでいた群衆に突っ込み、大きなツリーも引き倒した。トラックに乗っていたのは2人の男で、1人は警察に拘束され、もう1人はテロ現場で死亡しているのが見つかった。メルケル首相は「テロ攻撃」と断定した。

 警察当局は一時、パキスタン国籍を容疑者として拘束したが、嫌疑不十分で釈放した。この事件で、IS系のアマク通信が「われわれの戦士が実行した」との犯行声明を出した。治安関係者は、ISの直接指揮下の犯行というよりも、同組織の過激な呼び掛けに刺激された“一匹オオカミ”型のテロの可能性が高いと見て、犯人の行方を追っている。

 昨年100万人が超える難民が流入したドイツでは7月、南部のアンスバッハの野外コンサート会場でシリア人難民が自爆テロを起こしたほか、アフガニスタン人による襲撃事件も起きていた。治安当局は11月、全国的に活動していたイスラム団体「真実の宗教」をISテロに関与したとして非合法化した。

 治安当局はクリスマス市を狙ったテロが起きる可能性があるとしてドイツ全土で警戒を強め、12月はじめには、南部の都市のクリスマス市を狙ったテロ容疑でイラク系の12歳の少年を拘束した。ISの指令を受けた犯行だったとされる。

 しかしドイツを含め、フランスなど欧州の治安当局は今回のテロが爆弾や重火器ではなく、いつどこでも入手できる車が使われたことにあらためて衝撃を受けている。8月に米軍の空爆で殺害されたIS公式スポークスマンのムハマド・アドナニは「車や石、棒切れ、毒」などあらゆる手段を使ってテロを起こすよう呼び掛け、これに呼応する形でニースの車暴走テロが起きた。

 今回もニース同様、車を凶器にしたテロであれば、重火器や爆薬などの購買や流通をいくら警戒しても防げなかったことになり、治安当局の苦悩は深い。フランスでもこのほど、ディズニーランドやパリのシャンゼリゼなどを狙ったテロが摘発され、昨年11月のパリ同時多発テロ以降続けている非常事態宣言を来年7月まで延長した。

 特に治安機関が懸念しているのは、パリの同時多発テロなど欧州テロの立案などに深く関与しているIS幹部、アブ・ソレイマネ、アブ・アハマドの2人が地下に潜って行方が分からないままになっている点だ。シリアやイラクでISが追い詰められる中、欧州のテロの脅威は逆に高まっているといえる。

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