世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月26日

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 ネオコン代表的論客で米ブルッキングス研究所上席研究員のロバート・ケーガンが、11月20日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説にて、トランプ次期大統領が米国優先路線を打ち出すことで、米国主導の世界秩序への別れを告げようとしているが、内向きの時代が長く続けば、世界に取返しのつかないダメージを与えかねないと、警告しています。要旨、次の通りです。

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 トランプは「米国が先」路線を打ち出すことで、戦後70年続いた米国主導の世界秩序への別れを告げようとしている。オバマはこの点では過渡期の指導者だったのであり、トランプの選出で米国優先に決定的に転換した。

 これは米国が孤立主義に陥ることではない。米国は経済的にも世界から離れることはあり得ない。トランプがやろうとしているのは、他の国と同様自分の利益を第一に考える国になるということである。

 グローバルな同盟体制、そして自由貿易体制は米国自身の利益だが、トランプは米国を「普通の国」、すなわち、利己主義的な超大国に回帰させる。そこでは、イスラム過激主義のテロのみが喫緊の脅威と見なされる。米国にとっての他国の価値は、共にイスラムと戦うかどうかのみを基準として判断されることになる。同盟国か敵国か、民主主義か専制主義かなどは二義的な問題となるので、ほとんどの諸国は米国にとってどうでもよくなる。貿易は、グローバルな秩序の強化、中小の同盟諸国の安全強化といった目的を失い、単に米国がいくら儲けるかだけの問題となる。

 米国はロシアや中国に「勢力圏」を認めなかったが、米国が利己主義に戻れば、どうでもよくなる。トランプ政権は、米国が東アジア、中東欧で覇権を唱えるのは無意味と考えていよう。他方、米国が既存の同盟を破棄すれば問題が起きるから、同盟相手が新たな現実に対応することを期待しているのであろう。

 トランプ政権は、米本土を脅かしている外国はないのだから米国の兵力を海外に投入する必要はない、と考えていよう。従って、イランを爆撃することもないだろう。核大国は、米国本土から核ミサイルで脅すことができる。今や、イスラム・テロとの戦いですら、ドローンや特殊部隊、そしてパートナー諸国の地上軍によって行い得る。トランプ政権はこのように考えているのだろう。

 このような内向きの時代は、どのくらいの期間続くだろう? 第一次大戦後米国は、20年間にわたってグローバルな責任を取るのを回避し、自分の周りの世界がメルト・ダウンしていくのを傍観していたのである。米国人は今回も、同じことを繰り返すだろう。そうやって世界が不安定化しても、米国にその禍が及ぶのは最後になるというわけである。米国もいつかは、内向きだけではやっていられないということを悟るだろうが、その時には取り返しのつかないことになっているかもしれない。

出典:Robert Kagan,‘Trump marks the end of America as world’s ‘indispensable nation’’(Financial Times, November 20, 2016)
https://www.ft.com/content/782381b6-ad91-11e6-ba7d-76378e4fef24

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