世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月5日

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 南シナ海での中ロ合同軍事演習やプーチンの訪日等、ロシアのアジア回帰が言われるが、ロシアの真の戦略的関心は欧米にありアジア関与は表面的なものだと、11月26日付の英エコノミスト誌が論じています。要旨は以下の通りです。

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 ロシアのアジア回帰が識者の間で話題になっている。2014年には中国と天然ガス契約が成立し、10年前に停止した先端兵器の輸出も再開し、9月には、南シナ海で合同軍事演習を実施した。また、ロシアは、民生用原子力協力や武器輸出を介して対印関係を強化し、ベトナムのカムラン湾にもロシア船が寄港するようになった。さらに、プーチンは2012年にロシア初のAPEC首脳会談をウラジオストクで開催した。

 この12月には、安倍首相の招きで訪日し、経済協力と共に、行き詰まっている北方領土問題についても協議する。安倍は、プーチンと温泉で裸の付き合いをしながら北方領土を取り戻すことを期待している。プーチンはこの経験を楽しむかもしれない。彼は日本が中国を大きな脅威と見て、中国からロシアを引き離したがっていることを知っている。それに安倍には北方領土で成果を上げたい個人的理由がある。特に日ロ平和条約の締結は、安倍の父、安倍晋太郎外相の悲願だった。結局、プーチンは安倍の経済提案を受け入れ、北方領土についてはごく僅かしか提示しないだろう。

 何よりもプーチンは、オバマが結集した反ロシア統一戦線から米国の主要同盟国を引き剥すと見えることにほくそ笑むだろう。実際、ロシアのアジア回帰はそれ自体が目的ではないことがわかる。ロシアの対アジア貿易はアジア貿易全体の僅か1%にすぎない。ロシアのアジア回帰は、欧米と対決するロシアの立場強化が目的であり、この戦略にとってアジアは本質的要素ではなく、中国とのガス取引も、西側の制裁で欧州での選択肢が限られたから実現した。

 しかし、ロシアと米国の関係が変わったらどうなるのか。プーチンもトランプも関係改善を望むと言っている。その場合、プーチンのアジア回帰はどうなるのか。極東のロシア人は、ロシアの国章、双頭の鷲は東西両方を見ているが、アジアに背を向けていると冷やかに見ている。

出 典:Economist‘Russia’s pivot to Asia’(November 26, 2016)・
http://www.economist.com/news/asia/21710832-vladimir-putin-leaning-east-his-engagement-superficial-russias-pivot-asia

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