世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月16日

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 12月13日の英フィナンシャル・タイムズ紙で、ガードナー同紙コラムニストは、アレッポ陥落はイランとロシアの勝利で、トランプ政権は両国と交渉してアサドの退陣時期を勝ち取るべきだと述べています。主要点は次の通りです。

(iStock)
 

 アレッポの陥落は、何よりもイランの勝利を意味する。そして、これによってロシアは国際社会でのグローバル・パワーに伸し上がった。ロシアとイランは同盟を組んでシリアにあたった。2011年に市民の反政府運動の弾圧に乗り出したアサド政権はその後三回にわたり崩壊の危機に直面したが、ロシアとイランはアサド政権の存立を支援してきた。

 しかし、トランプ新政権の出方はロシア、イランで違う。トランプが国務長官に指名したティラーソンはプーチンと緊密な関係を持っている。しかし安保補佐官のフリンはイランに対する強硬姿勢を振り回している。

 トランプとプーチンの関係は、公約通りイラン核合意を破棄するかどうかによって試される。合意は制裁解除と引き換えにウラン濃縮を規制しイランの核兵器保有の能力を凍結する唯一の方法であった。それがなければ中東は紛争に陥り、核開発競争に陥っていたであろう。

 トランプの政策はツイート以上はわからない。しかしイスラム革命防衛隊等に対する「二次的制裁」の権限は残っている。これは米独自の制裁であるが金融などで大きな効果がある。そのこともありイランはアレッポの勝負を急いだ。

 アレッポ陥落はイスラム革命防衛隊がヒズボラなどの勢力と連携して達成した。それによりイランが支援する領土はバグダッドからモスル、ベイルートまで連続して広がる領域になった。イランこそアレッポ戦争の真の勝者である。

 サウジやトルコが今後ロシアやイランの方を向いてくるだろうという意味でもイランの勝利である。反政府勢力は未だ10万超の勢力を維持していると見られるが、都市部からは追放され、アサド・グループが政権を持つ限り彼らはISやアルカイダのような過激主義に向かうだろう。

 かかる状況の中で米国が取るべき「分別のある」政策は、抑々核合意を欲してはいなかったイランの強硬派を勢いづかせるかどうかをよく考えて決めることだ。新たな制裁は必要ない。既にある十分な梃を使ってロシア、イランと交渉してアサド政権の退陣時期を勝ち取ることだ。その政策が「乱暴で無思慮な」ものになれば厳しく責任を問われることになるだろう。

出 典:David Gardner ‘Tehran is the real victor in the battle for Aleppo’(Financial Times, December 13, 2016)
https://www.ft.com/content/84efe470-c119-11e6-81c2-f57d90f6741a

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