今回のテーマは「トランプ就任演説を200倍楽しむ方法」です。世界が注目する共和党ドナルド・トランプ氏の就任演説が、2017年1月20日正午(日本時間同月21日午前2時)に行われます。「合衆国憲法を維持し擁護する」と宣誓した後、演説を行います。
誰が草稿するのか、どのような演説スタイルをとるのか、何を語るのかなど見所満載です。そこで、本稿ではトランプ氏の就任演説のポイントについて説明します。
誰が草稿するのか
トランプ氏は就任演説のスピーチライターにスティーブン・ミラー氏を指名しました。では、ミラー氏とはどのような人物なのでしょうか。
大統領選挙でトランプ陣営の政策担当であったミラー氏は、次期政権ではホワイトハウスの上級アドバイザーになります。現在31歳の同氏は、トランプ氏が司法長官に起用したジェフ・セッションズ上院議員(共和党・アラバマ州)のスタッフでした。反オバマ色の強い市民団体「ティーパーティー」から支持を得たミシェル・バックマン元下院議員(共和党・ミネソタ州)の報道官も務めており、議会経験があります。
大統領選挙では、ミラー氏は複数の役割を果たしてきました。第1に政策に関するアドバイス、第2にトランプ氏の演説の草稿、第3に集会での演説です。集会では前座で登場し、熱弁を振るいトランプ支持者の熱意を高めたのです。選挙後の「感謝集会」においても、同氏は支持者に対してカリスマ性を発揮して、彼らを熱狂的にしています。
さらに、ミラー氏は民主党ヒラリー・クリントン候補(当時)の選挙メッセージを打ち消す役割も担っていました。例を挙げてみましょう。クリントン候補は、2015年4月ネットを通じた出馬宣言の中で、「一般の米国人の擁護者になる」と主張したのです。それに対して、ミラー氏は、ある集会でトランプ候補(当時)は決してロビイストや特定の利益団体のために働くことはないと支持者に訴えた上で、「トランプはあなたの擁護者になる」と断言し、クリントン候補よりも強いメッセージを発信したのです。
ミラー氏の政策についてもみてみましょう。同氏は移民に関してどのような立場をとっているのでしょうか。簡潔に言ってしまえば、反移民、反多文化主義です。例えば、メキシコ系移民は自分を米国人と考えずにメキシコ人だと認識していると非難しています。反異文化的な発言を繰り返して白人文化を守ろうとするトランプ氏とミラー氏には、明らかに類似点が存在しています。
2017年1月4、5日の両日、筆者はニューヨークにあるトランプタワーでフォトグラファーたちと一緒にタワーを訪問するトランプ新政権の関係者を撮影しようと待ち構えていました。5日午前、フォトグラファーたちがタワー1階のエレベーターに乗るある男性に向かって一斉にカメラのシャッターを切ったのです。筆者が気づいた時は、すでにその男性は後ろ向きでエレベーターの前に立っていました。
「あの男性は誰ですか」
筆者の質問にフォトグラファーの一人がこう返事をしてくれました。
「スティーブン・ミラー。頭が少し薄い男」
恐らく、就任演説の草稿の打ち合わせがあったのでしょう。ミラー氏は、共和党全国大会でトランプ氏の大統領受諾演説の草稿も行っています。暗黒の米国社会を描写した受諾演説に対して、就任演説では未来と希望に満ちた内容を打ち出せるのかに注目です。