海野素央の Love Trumps Hate

2017年1月17日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプタワー詣でをする信者たち」です。2017年1月20日に行われるドナルド・トランプ氏の大統領就任式を前に、熱狂的なトランプ支持者がニューヨーク五番街にあるトランプタワーを訪問しています。本稿では、タワーでヒアリング調査を行いましたので彼らの声を紹介しましょう。

護衛官(シークレットサービス)との会話

トランプタワー入口(筆者撮影@ニューヨークトランプタワー)

 現在、トランプタワーは厳重な警備体制が敷かれています。タワーがある56丁目と57丁目の区間には2カ所検問所が設けられ、そこで警察が訪問者に対して訪問目的を尋ねています。タワーに入ることができると、次にメタル探知機による手荷物検査を受けます。タワーには護衛官や警察が至る所におり、不信な行動をとる訪問者に目を光らせています。

 例えば、1カ所に立ち止まっていると、護衛官から即座に移動するように注意を受けます。トランプタワー1階エレベーター前ではトランプ次期大統領や起用する閣僚を撮影しようとゲッティイメージズ及び米ニューヨーク・タイムズ紙などのフォトグラファーたちが待機していました。筆者も彼らと一緒に待ち構えていると、突然身長190センチぐらいで体格のいい短髪の白人護衛官が接近してきたのです。彼は筆者に不信感を抱いていました。それもそのはずです。黒色のキャリーバックを持ってニューヨーク・タイムズ紙を読みながら、エレベーターに乗り降りする人物に視線を向けていたからです。

 「何かお手伝いすることがありますか」

 声のトーンは柔らかいのですが、疑いの眼差しを向けしかも威圧的でした。そこでスーツにつけている日米の国旗のバッジを見せて、自分は不審者ではないという非言語メッセージを発信したうえで、次のように語りました。

 「大学教授です。日本の大学で異文化コミュニケーションを担当しています。大統領選挙の研究のためにトランプタワーに来ました」

 目を細めて傾聴していたこの白人護衛官は、続けて質問をしてきました。

 「ここにいるフォトグラファーを知っているのですか」

 「ええ、ゲッティイメージズとニューヨーク・タイムズ紙のフォトグラファーを知っています」

 即座に筆者は返事をしました。その一言が護衛官を安心させたのです。

トランプタワー1階(筆者撮影@ニューヨークトランプタワー)

 ゲッティイメージズとニューヨーク・タイムズのフォトグラファーとどのようにして関係構築ができたのかについて簡単に説明をしましょう。2012年米大統領選挙における第1回大統領候補テレビ討論会(西部コロラド州デンバー)のプレスセンターで、ニューヨーク・タイムズ紙のフォトグラファーと遭遇しました。彼はダグ・ミラーと名乗っていました。日本から大統領選挙の研究でデンバーを訪問していると告げると、ミラー氏はカメラを取り出して筆者を撮影してくれたのです。トランプタワーにいるニューヨーク・タイムズ紙とゲッティイメージズのフォトグラファーにこのストーリーを語ると、彼らはミラー氏が業界の間で「伝説の人」と呼ばれていると教えてくれました。偶然ですが、その日(2017年1月5日)の米ニューヨーク・タイムズ紙一面に同氏が撮影した写真が掲載されています。4年前の出来事が彼らと関係を作ってくれたのです。

 上のような厳しい警備体制の中で、トランプタワー詣でをする信者を対象にヒアリングを実施しました。

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