海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年11月25日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプ次期米大統領のビデオメッセージとその意図」です。共和党ドナルド・トランプ次期米大統領は、投開票日から2週間が経過した11月21日、動画サイト「ユーチューブ」を通じてメッセージを発信しました。本稿では、「なぜこのタイミングなのか」「誰にどのようなメッセージを発信したのか」「意図は何か」の3点を中心に同氏のビデオメッセージを分析します。

絶妙なタイミング

 国際社会の目は、ペルーの首都リマで開催されている環太平洋経済連携協定(TPP)参加12カ国による首脳会議に向いていました。各種メディアによりますと、参加国は発行に向けて国内の手続きを推進することで一致しました。そのタイミングを計ったかのように動画を通じてトランプ氏は、就任初日にTPP離脱の意思を通知すると明言して公約を果たす決意を示したのです。オバマ大統領の医療保険制度改革(通称オバマケア)及び米国とメキシコの国境に建設する壁では修正案を出しましたが、TPPに関しては妥協の余地はないという明確なメッセージを参加国に突き付けたのです。

 選挙期間中トランプ氏は、自分は「自由貿易」の反対論者ではないが「賢明な(スマート)貿易」が好ましいと繰り返し主張しました。同氏は、現在の自由貿易体制は愚かな職業政治家によって構築されたものであり、その体制下で中国、メキシコ並びに日本が勝ち、米国は負けていると指摘したのです。  

 今回のビデオメッセージの中には、無能な職業政治家に代わって自分が多国間ではなく2国間交渉を行い、公平で賢い取引をするというメッセージも含まれています。選挙期間中、トランプ氏は「自分は世界の大統領になるのではない。米国の大統領になるのだ」と断言し、通商において米国1国のみが勝ち続ける体制の構築の必要性に訴えてきました。それが「米国第一主義」であり、2国間交渉によって実現すると同氏は言いたいのです。

労働者階級の利益第一主義

 ビデオメッセージは、国民向けに発信されたものであることは言うまでもありません。従ってメッセージの受信者は国民です。ただ勝利宣言でもそうでしたが、今回公開されたビデオにおいてもトランプ氏は、ことに白人の労働者階級を意識したメッセージを送っています。

 鉄鋼の生産及び自動車の製造などにおける次世代の改革を米国内で行い、富と雇用を米国人労働者のために作り出すとトランプ氏はビデオの中で強調しました。この文脈を読みますと、「米国第一主義」は「(白人)労働者階級の利益第一主義」と置き換えることが可能です。今後、トランプ政権では選挙期間中同氏を熱狂的に支持した白人の労働者並びに退役軍人から構成される「トランプ軍団」の利益に焦点を当てた政策が最優先されることは容易に理解できます。

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