海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年10月26日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「投票率向上の秘密兵器」です。研究の一環として中西部オハイオ州クリーブランドにあるクリントン選対に入り戸別訪問を実施しています。10月20日にサフォーク大学(東部マサチューセッツ州ボストン)が発表した世論調査によれば、民主党ヒラリー・クリントン及び共和党ドナルド・トランプ両候補の支持率は共に45%で大接戦を展開しています。本稿ではクリントン陣営の投票率向上の秘密兵器とその重要性を中心に述べていきます。

期日前投票を促すオハイオ州のコミットメントカード

期日前投票用のコミットメントカード

 クリントン陣営には投票率向上を狙った秘密兵器があります。期日前投票用のコミットメントカード(お約束カード)です。投開票日まで30日を切り、クリントン陣営では投票率を上げるために有権者に期日前投票を強く促しています。ボランティアの運動員及び選対でフェローと呼ばれているインターンシップの学生は標的となっている有権者の家を訪問すると、まず投票日までのカレンダーが印刷されたコミットメントカードを見せます。次に、いつ期日前投票に向かうのかを尋ねます。期日前投票日が決まるとカードに日にちを記入します。さらに、下記のように問いかけて期日前投票に行く時間も決めてもらいます。

 「午前中に投票に行きますか。昼食後ですか。それとも会社から戻ってきてからですか」

 有権者に期日前投票の「行動計画」を作らせるのです。投票の時間が決定すると時間もコミットメントカードに記入し、そのうえで署名をしてもらいます。運動員は署名入りのカードを選対に持ち帰り、切手を貼って有権者に送り返すという方法をとっています。標的となっている有権者が不在の場合、運動員は「投票に出向く日時を選択してください」と印刷されたパンフレットを玄関の前ないしドアに挟みます。クリントン陣営の地上戦はそこまで用意周到なのです。

 地上戦においてコミットメントカードを用いた選挙戦略は、2012年米大統領選挙においてオバマ陣営が開発したものです。たとえ署名をしても法的拘束力はないのですが、心理的効果が高いのでクリントン陣営も取り入れ、カードにカレンダーを印刷して「見える化」し進化させたのです。

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