海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年11月8日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「最終盤における訪問州から読み解くトランプ・クリントン両候補の戦略と意図」です。残すところ、投開票日まであと1日となりました。米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティックス」によりますと、各種世論調査の平均値(10月30日-11月6日)で民主党ヒラリー・クリントン候補は共和党ドナルド・トランプ候補をわずか2.9ポイントリードしており、その差は統計上の誤差内となっています。本稿では、最終盤における訪問州から両候補がどのようにして選挙人の過半数270を獲得するのかを分析します。

大統領に名を連ねるのはどちらか?(iStock)

最終盤の訪問州の比較

 最終回となった第3回米大統領候補テレビ討論会は10月19日に終了しました。翌日20日から投開票日直前の11月7日までの両候補の訪問州の回数を調べてみますと、種々の特徴がみえてきます。

 まず、訪問回数においてクリントン候補はトランプ候補の約半分で、クリントン陣営は余裕をもたせた日程を組んでいます。第3回テレビ討論会終了後、クリントン候補は全体及び激戦州の支持率において優勢であったため、トランプ候補と比べると積極的に激戦州を訪問していません。

 討論会終了後の集会で、クリントン候補は合計3回のテレビ討論会で4時間半にわたりトランプ候補と討論を行ったので「自分には体力がある」と強調しています。クリントン陣営は最終盤に入って同候補が健康問題で支持率を下げないように負担が少ない日程をたてたと言えます。

 次に、2008年及び12年において激戦州の中の激戦州と言われた南部バージニア州をクリントン候補が訪問していない点も特徴です。コミー連邦捜査局(FBI)長官がクリントン候補の私用メール問題捜査再開を公表したことにより、同州におけるトランプ候補との差が5ポイント以下になったため「リアル・クリア・ポリティックス」は激戦州に入れましたが、クリントン陣営はその枠から外しています。

 さらに、訪問州の回数から両候補が重点を置いている4州が明確になりました。南部フロリダ州、東部ペンシルベニア州、中西部オハイオ州及び南部ノースカロライナ州です。ただし、トランプ候補は、最終盤で中西部ミシガン州、西部コロラド州及び東部ニューハンプシャー州にクリントン候補よりも多くの時間を費やしており、訪問州を拡大しています。その背景には選挙人20のペンシルベニア州を獲得できなかった場合、他の激戦州で補うという意図があります。

トランプの過半数270へのルート

 激戦州における訪問回数に基づいて分析してみますと、トランプ候補には3つのルートがあります。同候補はフロリダ州(29)、ペンシルべニア州(20)及びオハイオ州(18)を制して、これらの3州の選挙人の合計67に前回の大統領選挙でミット・ロムニー共和党候補が獲得した選挙人206を加えて273の過半数を狙っています。効率重視の思考様式を備えたトランプ候補には最適なルートです。これがルート1です。

 ルート2は、前述しましたが仮にペンシルベニア州を奪還できない場合、トランプ候補は失ってしまった選挙人20をコロラド州(9)、アイオワ州(6)、ネバダ州(6)及びニューハンプシャー州(4)で満たし、ロムニー候補が得た選挙人206に加えて272ないし278の獲得を目指しています。

 ただし、ルート1と2は、2012年ロムニー候補が接戦でオバマ大統領を破った南部ノースカロライナ州(15)を守ることを前提に成り立っています。従って、トランプ候補は同州を守れない場合、ミシガン州(16)で選挙人の数を相殺する戦略をとっています。これがルート3です。

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