世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年2月2日

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 ビル・バーンズ元駐露米大使・元米国務副長官が、1月7日付けニューヨーク・タイムズ紙に「我々はロシアについてどうして馬鹿なことをするのか」との論説を書き、対ロ関係のあり方について論じています。論旨、次の通り。

(iStock)
 

 冷戦後4半世紀、米ロ関係は深刻な不満、誤解、失望で特徴づけられてきた。米ロ双方ともに幻想を持っていた。米国は、モスクワとの永続するパートナーシップのビジョンとロシアを衰退する地域大国と片付けることの間を揺れ動いてきた。ロシアは、米国との戦略的パートナーシップの考えから、ロシアを従たる地位にする米主導の現在の国際秩序を壊す願望に動いてきた。

 現実にはロシアとの関係は競争的であり、しばしば敵対的である。その核心には、世界におけるお互いの役割、立場についての考えの違いがある。個人的に良好な関係がこの違いを乗り越え、大取引を可能にすると考えることは魅惑的であるが、賢明な政策のためには馬鹿げている出発点である。

 プーチンはリアリストであり、ロシアの相対的弱さを理解しているが、衰退する強国は台頭する強国と同程度に破壊的でありうることを示している。彼は多くの目標を見ている。すなわち、もしロシアを強化できないなら、米国を幾分か、引きずり降ろす。ウクライナの政府がいうことを聞かないなら、クリミアを奪取、機能しないウクライナを作り出す。シリアでの政権交代を我慢できなければ、軍事力を使い、西側を去勢し、アサドを守る。EUを直接威嚇できないなら、EU反対の民族主義者を支援し、難民の波を利用する。西側民主主義の偽善、無能を事実と虚構の区別をせず、暴く。

 何をすべきなのか。ロシアは未だ無視するには大きすぎ、誇り高く、影響力があり、米国に匹敵する核兵器大国である。北極海からイラン、北朝鮮の問題のプレイヤーである。望ましい事を試みる前に、重要なことに焦点を当てるべきである。

第1:ロシアのハッキングへのオバマ政権の対応を維持し必要なら強化すべきである。ロシアは我々の民主制度に挑戦した。次の戦場は今年の欧州での選挙になる。

第2:欧州同盟国にNATOへの約束は絶対的であると安心させるべきである。同盟は米の重荷ではなく、力強い資産である。

第3:ウクライナに焦点を合わせるべきである。ウクライナは欧州の将来、ロシアの将来にとり最重要である。NATOやEU加盟は先のことであるが、ウクライナで成功する政治システムを作ることを支援すべきである。

 最後に、表面的には魅惑的なイスラム過激派に対する共同戦線、中国封じ込めのための共通の努力などのような考え方には用心深くあるべきである。ロシアのシリア介入はテロの脅威を悪化させたし、プーチンには北京との関係を犠牲にする気はない。

 ロシアを無視したり過小評価すべきではない。確固たる姿勢、警戒心、何が可能かの限度を把握することが、プーチンが体現する不満と不安の爆発しやすい組み合わせに対処する最もよい方策である。我々の持ち札はプーチンのよりずっと強い。自らの強さに自信をもって、我々の価値を堅持し持ち札を使えば、我々は最終的には幻想のないもっと安定した関係を築けるだろう。

出典:William J. Burns,‘How We Fool Ourselves on Russia’(New York Times, January 7, 2017)
http://www.nytimes.com/2017/01/07/opinion/sunday/how-we-fool-ourselves-on-russia.html

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