世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月25日

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 トランプの「米国の核戦力を強化すべし」とのツイートに対し、12月23日付ワシントン・ポスト紙社説が、思慮に欠けた発言であると非難し、核兵器がテロリストの手に渡らないようにするなど核兵器の危険を軽減することに焦点を当てるべきである、と言っています。要旨、次の通り。

(iStock)
 

 核兵器の責任ある管理、指揮命令系統の頂点としての注意深い任務は、大統領の厳粛な義務である。それゆえ、トランプの核兵器についての12月23日の向こう見ずなツイートは災厄である。

 大統領候補として、トランプの核兵器についての発言は、様々な異なった考えが混在していた。一方で、日韓からの米国の核の傘引き上げを示唆し、他方では、「唯一最大の脅威」である核兵器への懸念を示しつつ、自らが予測不可能であることを誇った。大統領たるもの、このセンシティブな問題では言葉を注意深く選ぶべきであるが、トランプはそうしているようには見えない。12月22日、トランプは、「世界が核について正しく認識する時が来るまで、米国は核の能力を大いに強化、拡大しなければならない」と述べ、「軍拡競争は放っておけばよい。我々はあらゆるやり方で優位に立ち、勝ち抜くであろう」とも言った。

 核抑止も核兵器もすぐに無くなることはないだろう。しかし、米国とロシア(世界中の核爆弾の93%を保有)は、30年近く着実に核兵器を減らしてきた。米露間の新START条約は、こうした低い保有数を義務付ける条約である。他の軍備管理協定(特に1987年のINF条約)は歪んできてはいるが有効である。冷戦時代から引き継いだ大量の核弾頭を減らすには、長年にわたる努力が必要であった。トランプの新しい提案は、このコースを逆転させることになるのか。他国を制止することになるのか、それとも、刺激することになるのか。

 トランプのツイートは、プーチンがロシアの核戦力強化についていささか威勢のいい発表をした後になされた。ロシアと米国は、核兵器と運搬手段(爆撃機、潜水艦、ミサイル)の近代化について、それぞれのやり方をしている。近代化は米国の抑止力の信頼を維持するための重要な要素ではあるが、費用はどうするのか。12隻の弾道ミサイル潜水艦を建造するという海軍の計画は、他の艦船や潜水艦の計画により圧迫されている。トランプはどういう任務のために核をさらに拡大させたいのか。トランプは就任後、緊急時に用いるべき核戦争計画などを示されるだろう。これらは、最高司令官にとって考え込まざるを得ない事柄である。核兵器が現実のものである限り、トランプは、核兵器がテロリストの手に渡ることを阻止するなど、核兵器がもたらす危険を如何に軽減するかに焦点を当てるべきである。それ以上のことは、必ずしも我々を安全にはしない。

出典:‘Trump’s distressing chest-thumping on nuclear weapons’(Washington Post, December 23, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/trumps-distressing-chest-thumping-on-nuclear-weapons/2016/12/23/6a528540-c88b-11e6-bf4b-2c064d32a4bf_story.html

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