中東を読み解く

2017年1月30日

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 難民受け入れの凍結やイスラム7カ国からの入国禁止を決めたトランプ大統領の大統領令は米国だけではなく世界各地で大混乱を引き起こしている。入国禁止の対象となった国はイランを除き“いじめやすい弱小国”が中心。テロの脅威を減らすどころか、米国を憎悪したイスラム教徒を過激派に追いやる効果しかない。

特定の国の人々を入国禁止にしたことに抗議する人々。テキサス州ダラスのフォートウォース空港(GettyImages)
 

ビジネス展開国を回避か

 トランプ大統領が27日署名した大統領令のポイントは3つ。1点目は全ての国からの難民の受け入れを120日間凍結、2点目はシリアからの難民は無期限停止、3点目は、イラン、イラク、リビア、イエメン、スーダン、ソマリアの6カ国の市民の入国を90日間禁止する、というもの。

 この大統領令によって米国行き航空機の搭乗を拒まれたり、米国への入国を拒否された人々は29日までに約300人に上り、米国だけではなく、世界各地の空港などで混乱が拡大した。米国の永住権や正式なビザを持っている人たちも多く含まれている。たまたま旅行や葬儀に出席するために出国している間に大統領令が発効し、戻れなくなった人たちも多い。

 こうした混乱の中、米国内の人権団体がニューヨークのケネディ国際空港へ到着後に拘束されたイラク人の難民2人を支援して提訴。連邦地裁が合法的滞在資格を持つ人を強制送還しないよう米政府に命じたが、難民入国を認めるという判断は明確に示しておらず、混乱が収まる兆しはない。

 この大統領令に対し、入国禁止を名指しされた当該国は強く反発。イラン政府は「イスラム世界に対する侮辱だ」として、イランに渡航する米国民の入国禁止措置を検討する方針を表明した。イラク議会外交委員会も政府に報復措置を取るよう求めたほか、独仏外相やトルコの首相もトランプ氏を批判するなどイスラム世界を中心に全世界で反米感情が拡大しつつある。

 標的にされた7カ国のうち地域大国のイランはトランプ氏が選挙期間中からテロ支援国として非難し、核合意の破棄にまで言及していた。しかし他の6カ国は政情不安や内戦下にある国々で、単に「イスラム教徒の入国禁止」という選挙公約を実現するためにだけ選ばれたことが濃厚。

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