中東を読み解く

2017年1月11日

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 ペルシャ湾のホルムズ海峡で8日、米海軍の駆逐艦にイラン革命防衛隊の高速艇が急接近し、駆逐艦が警告射撃する事態が発生した。イラン側のこうした挑発的な行動は2015年から頻発しており、今回はトランプ新政権誕生に向けた示威行動と見られている。ホルムズ海峡は緊張に包まれている。

強硬派優位が現実的に

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 米国防総省の発表などによると、異常接近されたのは駆逐艦マハン。他の艦船2隻とともにホルムズ海峡の公海を北へ向かって航行していたところ、革命防衛隊の武装高速艇4隻が猛スピードで接近した。うち1隻は約800メートルまで近づいた。マハンは繰り返し減速するよう要求したが、高速艇はこれに応じようとしなかった。

 このため危険を感じたマハンが3回に渡って警告射撃するとともに、米ヘリコプターから水面に浮く発煙筒を落とし、高速艇を停止させた。米側は「危険でプロ意識に欠ける」(国防総省報道部長)「緊張を高める行為」(ホワイトハウス報道官)とイラン側を強く非難しているが、偶発的な軍事衝突のリスクは高まっている。

 イラン側の敵対行動は2015年の23件から16年は35件に増えた。昨年には革命防衛隊の高速艇が同じように米艦船に異常接近して警告射撃を受け、また米海軍兵ら10人がイラン側に拘束される事件も起きた。11月にはやはりホルムズ海峡上空を飛行する米海軍ヘリに向けてイラン側が武器の照準を合わせる事態も発生した。

 イラン側のこうした行動はロウハニ政権の指示によるものではない。イランの権力構造は最高指導者ハメネイ師の下で、ロウハニ大統領を頂点とする穏健派と革命防衛隊や宗教勢力を中心とする保守強硬派がせめぎ合っている。現在は核合意で経済制裁を解除させたロウハニ師が優位にあるものの、いつ権力が入れ替わってもおかしくはない。

 ロウハニ政権は革命防衛隊の行動に命令を下すことは事実上できない状況で、ペルシャ湾での米軍に対する挑発行動は革命防衛隊が独自で行っていると見られている。トランプ次期大統領は昨年夏の高速艇の異常接近事件が起こった際、「ちっぽけな船でわれわれの美しい駆逐艦にちょっかい出すなら撃ってやる」と宣言しており、革命防衛隊には同氏の出方を伺う意図もあったようだ。

 ロウハニ政権は経済制裁が解除されれば景気が回復すると主張してきたが、昨年初めに制裁が解除されてほぼ1年が経過した今も、国民の暮らし向きが大きく向上したという変化は感じられず、政権は焦りを強めている。

 しかもロウハニ大統領の後ろ盾となってきた穏健派の重鎮ラフサンジャニ元大統領が8日死去し、5月に予定されている大統領選挙に向けて強硬派が勢いづく可能性が出ていた。とりわけイラン核合意の破棄を主張してきたトランプ氏がイランへの強硬方針を打ち出せば、「反米」の強硬派が一気に優位に立つことも現実味を帯びてくるだろう。

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