中東を読み解く

2016年12月30日

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 内戦の続くシリアで、ロシアとトルコが主導した停戦が30日発効した。停戦が「壊れやすい」(プーチン・ロシア大統領)ものであることに変わりはないが、米国が全く関与していないのが特徴。停戦合意はロシアがトルコを抱き込み、北大西洋条約機構(NATO)の一角にくさびを打ち込んだともいえ、今後の中東の勢力図を塗り替える可能性をはらんでいる。

“新3国同盟”

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 今回の停戦合意はロシアがイニシアチブを取り、トルコとイランに働き掛けてまとめたものだ。3カ国はこの合意に先立ち12月20日、モスクワで外相会議を開催し、「モスクワ宣言」を発表した。この宣言は3カ国がシリアのアサド政権と反体制派を仲介し、停戦の実現を目指すという内容だった。

 シリア停戦はこれまで、2月と9月の2回、米ロが主導してまとめたが、いずれも破綻した。停戦と破綻の繰り返しの中でロシア軍が反体制派に猛爆撃を加え、アサド政権軍勢力が激戦地、北部アレッポを制圧。反体制派が大きな打撃を受けたのを見計らってロシアが停戦に持ち込んだ。敵対勢力が再起不能に陥ったスキに乗じたプーチン氏の絶妙な交渉術だ。

 アサド政権と停戦に合意したのは、トルコに本拠を置く反体制派の統合組織「シリア国民連合」の主要な7武装組織。うち5つは米国の軍事援助を受けている組織だ。この他の2つは、アルカイダ系の「シリア征服戦線」に近いイスラム主義者組織「アハラム・シャム」「ジャイシ・イスラム」と伝えられ、全部で6万2000人の戦闘員が停戦に応じることになる。

 停戦がこのまま続くと見る向きは少ないが、今回の合意で一段と鮮明になったのがシリアをめぐるロシア、イラン、トルコの関係強化だ。ロシアとイランはアサド政権を内戦当初から支援してきた2国だが、トルコはまったく立場が異なる。

 トルコはなによりもロシアに対する米欧の軍事同盟NATOの一員だ。ロシアは2015年11月のトルコによるロシア軍機撃墜事件でトルコへの経済制裁を発動するなど両国関係が極度に悪化した。しかし、トルコのエルドアン大統領が6月、プーチン氏に謝罪し、首脳会談にこぎつけるなど関係が好転した。

 特に7月のクーデター未遂事件で、エルドアン氏が事件の首謀者とするギュレン師の引き渡しを米国に要求したのに対し、オバマ政権がこれを拒否。対米関係が悪化するのに伴い、プーチン氏と急速に接近した。アレッポの反体制派地区の住民と戦闘員の退去も、ロシアとトルコが主導して実現したものだ。

 トルコは元々、シリアのアサド大統領の追放を要求する急先鋒で、「シリア国民連合」など反体制派の後ろ盾となってきた。しかし、ロシアとの関係を深める中で、この要求を事実上取り下げた。今やシリアをめぐりロシア、イラン、トルコの新たな“3国同盟”が結成された格好だ。

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