サムライ弁護士の一刀両断

2017年2月2日

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河本秀介 (かわもと・しゅうすけ)

弁護士

敬和綜合法律事務所所属。
東京大学卒業後、三菱重工業での勤務経験を経て、2007年に弁護士登録。
以後、会社関係訴訟、企業経営への助言、株主総会指導、M&Aアドバイスなど、コーポレート分野を中心に、幅広い内容の業務を遂行している。

 昨年、ピコ太郎さんの楽曲、「ペンパイナッポーアッポーペン」略して「PPAP」が動画配信サイトをきっかけに大きくブレイクしました。キャッチーなサウンドやインパクトのある衣装、馬鹿馬鹿しくもなぜかひきつけられる不思議な魅力があり、ついつい真似して歌った人も多いのではないでしょうか。もちろん、私もその一人です。

ピコ太郎氏(GettyImages)
 

 さて先日、「PPAP」や、「ペンパイナッポーアッポーペン」などの文字を、ピコ太郎さんや契約会社のエイベックス社とは全く無関係な会社が商標出願しているということが分かり、話題となりました。

 この会社は、マスコミの取材に対して、「エイベックス社に対して、ライセンス許諾を受けた上で事業展開するよう警告書を発している」と発言しているようです。

 ピコ太郎さんやエイベックス社は、今後「PPAP」を歌えなくなったり、CDやグッズを販売できなくなったりしてしまうのでしょうか。

「ブランドを守る」ための商標制度

 最初に、商標制度について、簡単に説明します。

「商標」とは「商品やサービスを示すものとして使われる文字や図形など」のことです。商品・サービスあるいは会社やお店の名前やロゴマークといったものが「商標」に含まれます。

 ある種類の商品やサービスについて、ある商標を使っている人は、その商標を自分の権利として特許庁に登録することによって、指定された種類の商品やサービスに関しては「自分だけが使うことができる」(専有する)権利が生まれます。

 例えばあるメーカーが、果物のキャラクターをつかった文房具に、「パイナポーペン」という商品名をつけて販売して大ヒットしたとします(ピコ太郎さんが「PPAP」をヒットさせなかった世界の話と考えてください)。

 その場合、メーカーが「文房具類」を示す商標として「パイナポーペン」という文字を登録した場合、ライバル社が「文房具類」に関して「パイナポーペン」やそれに似た言葉を使うことはできなくなります。

 また、ライバル社が「パイナポーペン」と似たような言葉を使った商品を販売した場合、商標権を持ったメーカーは、ライバル社に対して「類似した商標を文房具の名前に使ってはならない」(商標の使用差し止め)と求めることができます。

 では、なぜこのような制度が存在するのでしょうか。

 ある企業が自社製品にある商品名やロゴなどを自社の商標として使っている場合に、ライバル企業がそっくりの商品名やロゴを使って同じようなビジネスを始めたとすると、自社と他社の製品が区別できなくなってしまいます。

 そのような混同が生じることで自社製品の信用が損なわれたり、あるいは消費者が混乱したりすることは、産業全体にとっても好ましくありません。そこで商標法は、自分の商品やサービスの名前やロゴなどを「商標」として登録した場合に、「他人に使わせない」という権利を与えて保護することにしたものです。

 ざっくりと言ってしまえば「ブランドを守る」ことで「産業全体の発展を促す」ことが商標制度の目的だといえます。

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