世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年2月9日

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 フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのギデオン・ラックマンが、1月16日付同紙にて、3つのT(台湾、ティラーソン、貿易)に注目すればトランプの米国は中国との衝突に向かっていることが示唆されると警告、そのような米中衝突を引き起こしてはならないと主張しています。要旨、次の通り。

(iStock)

 トランプの対ロシア関係は毒々しく明白である。しかし、もっと重要で危険なことに注目すべきだ。それはトランプ政権が中国との衝突(軍事衝突も排除できない)に向かっているとの兆候が高まっていることだ。

 ティラーソン国務長官候補の議会承認公聴会での証言によれば、南シナ海で中国が建設している人工島に対する米国の立場が一層強硬になっている。同氏は人工島建設をロシアによる違法なクリミア併合に例えて、トランプ政権は「これらの島への(中国の)アクセスを認めない」とのシグナルを送ろうとしていると発言した。

 それは中国が軍事基地化している島の海上封鎖を示唆しているように聞こえた。中国は確実に海と空から封鎖を突破しようとするだろう。それはキューバ・ミサイル危機の現代版になる。環球時報は「大規模な戦争」になると警告、中国日報は「破壊的な対立」と呼んだ。
従来、米国の唯一の懸念は航行の自由であり島の帰属については立場を取ることはしないとしてきたが、この米の公式的立場とも矛盾する。しかし、ティラーソンは発言を撤回、補足説明することはしなかった。

 米中正常化の79年以後、米国は「一つの中国」政策を尊重してきた。何十年と米大統領は台湾総統と話すことはしなかったが、トランプは蔡英文総統の電話をとった。トランプは、中国が貿易で妥協しない限り「一つの中国」政策を転換すると述べた。中国は台湾の独立よりは戦争をすると言って来たので、これは極めて高リスクの政策だ。

 トランプの最重要関心事は貿易であろう。選挙戦で、トランプは中国との間にある5000億ドルの貿易赤字を許すわけにはいかないと言ってきた。反中国の保護貿易主義者が、国家貿易委員会を主宰することになった。既に中国からの輸入品に対する関税引き上げや輸入税の話が出ている。

 これら3つのT、すなわち、台湾、ティラーソン、貿易をみれば、トランプの米は中国との衝突に向かっていることに疑いはない。習近平の中国は格段にナショナリスティックになっている。中国は、アジアにおける米国の同盟国に軍事、外交、経済圧力を加えている。中国はミサイル防衛システムの配備決定を撤回させるために韓国の企業を差別している。シンガポールは長年台湾で軍隊の訓練を行ってきたが、中国は台湾との関係を止めさせようと圧力を強めている。中国は香港を通過するシンガポールの装甲車を差し押さえてしまった。

 最近、中国は空母を台湾海峡に派遣し、飛来する中国軍機に対し日韓がスクランブルをかけたりした。トランプと習近平は、それぞれの立場に固執しようとしている。

 米中対決はアジアにおける米国の同盟国等に難しい選択を強いるだろう。これらの国が、米中衝突を押し進めようとする、不規則で、予測が不可能、保護主義的なトランプ政権と協力するかどうかは明確でない。これでは、トランプ政権の米国と中国が衝突することになっても国際社会の同情を得られると当然視することは出来ない。

出典:Gideon Rachman,‘Pacific conflict looms between America and China’(Financial Times, January 16, 2017)
https://www.ft.com/content/a396bbf8-dbcf-11e6-9d7c-be108f1c1dce

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