ポケットモンスターは1996年の発売以来14年。ゲームソフトと関連商品を合わせると全世界での市場規模は累計3兆円に及ぶ。米国での人気も息が長い。交換・対戦し合って遊ぶトレーディングカードゲームの売れ行きでは、常に首位を争う。
ポケモン世代は下は3歳ぐらいから、上は40歳以上。ゲーム機の画面に現れる架空の生き物「ポケモン」をつかまえ、育て、対戦させながら、意外にも広いポケモン・ワールドで自分の成長を楽しんでいる。
過去15年、日本の経済は足踏みしていたかもしれないけれど、少なくともポケモンを成長させ、世に送り出した。子供たちの手のひらに、夢中になれる遊びを与えた。いつしかポケモンは日本を代表するブランドになり、キャラクターになっていた。
この対談シリーズを企画し、セットしてくださる浜野保樹さんは、「ただ単にキャラクターを定着させただけでなく、著作権とブランド管理に努力を傾け、ビジネスとして巨大な成功を収めた」ところに、今回の対談相手、石原恒和さん(ポケモン総合プロデューサー、株式会社ポケモン 代表取締役社長)の類稀なる才能を見る。
今年53歳。尽きないポケモン愛の持ち主は、片手に真新しいアップル「iPad」を持って現れた。ところは株式会社ポケモンの本社、六本木ヒルズ18階にある会議室だ。
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浜野 わたしは多分、「キティちゃん」と「ポケモン」だけだと思うんです。日本発、世界に出て行って、長い時間子供の心をとらえ続けている。しかも飽きられたり、使い捨てにされたりしないように、きちんとクオリティ・コントロールを持続させているものって。
ディズニーを思い出す
その点で、ディズニーに比肩する。石原さんは芸術系の大学院をお出になって、表現者としてだけでなく研究者としてもトレーニングを積まれた。テレビゲームの草創期から、批評家的活動もなさっていた。世界をポケモン以前、以後に分けるなら、これは「紀元前」に当たる1988年のお仕事ですが、『テレビゲーム―電視遊戯大全』という、歴史に残る傑作をものしてもおられる。
自身実作者だったウォルト・ディズニーと、石原さんは、そんなふうにバックグラウンドが違いますが、作品を送り出す持続力と、ブランドの品質管理力において他の人が真似できない実績を残してきたっていう、その一点で、お二人には共通項がありますし、ポケモンとディズニーは両雄と言っていい。
ゲーム、テレビと映画のアニメーション、カードゲーム、キャラクター…。あらゆる分野、あらゆる国で、今なお新しい支持者を幼い顧客たちの中につかまえ続けている。ポケモンは旅客機の塗装にまで採用されているわけですから。わたしはまず石原さんの、この品質管理能力に頭が下がるんです。