東大教授 浜野保樹のメディア対談録

2010年5月12日

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浜野保樹 (はまの・やすき)

東京大学大学院新領域創成科学研究科教授

1951年生まれ。工学博士。コンテンツ産業や制作に関する研究開発に従事する。主な著書に『大系 黒澤明』(講談社)『偽りの民主主義』(角川書店)『表現のビジネス』(東京大学出版会)などがある。(財)黒澤明文化振興財団理事、文化庁メディア芸術祭運営委員ほか。

 普通、シリーズ物というのは、年々人気に陰りを出すものなのに、ポケモンは尻上がりなんです。これまた特徴的。

映画第1作 『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(1988年)

石原 いや、でも、一度は人気に陰りが見えたんですよ。 

『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』という1998年の第1作は、アメリカだけで3000館公開でした。興収は8400万ドルくらい。

 そこから2作目、3作目となるにつれ、どんどん落ちてしまって・・・。アメリカでは、「シリーズ物で二匹目のドジョウを狙うとは志が低い」といった、厳しい反応もありましたしね。

浜野 はあ。でも日本では、ポケモン映画は近年、急復活しましたよね。大変な勢いで観客動員数を増やして。あれはどういうわけだったんですか。 

映画館でポケモンをプレゼント

2010年7月10月公開 映画『幻影の覇者 ゾロアーク』の上映館では
「セレビィ」をプレゼント

石原 ポケモンのソフトに新バージョンが出て、ゲームのハードウエアも新型になるのと符合させて、2006年頃から実験をやったんです。映画を見に来てくれた人のゲーム機に、映画館でポケモンをプレゼントするのですが、映画館でワイヤレス通信を使うのです。

 最初は大変でした。「映画館はそういうことをする場ではない」と言われることもあったりして。「せめて、実証実験をさせてください」とお願いして、2年くらい実験に当てたでしょうか。結果として、ゲーム機持参で映画館にいる人全員に、特別なポケモンをプレゼントする仕組みを完成させることができましたが、この仕組みを実現するまでには、様々なハードルがあり、それをひとつひとつ解決していくという課題があったのです。

説得のため全映画館、足で回る

 まず、株式会社ポケモンの社員全員で手分けをして、日本全国の映画館を回りました。1人受け持ち30館、なんて言いながら(笑)。

 ようやく映画館側の皆さんへの説得が成功し、上映劇場内で、映画の中で活躍するポケモンをプレゼントするという仕組みがスタートしたんです。封切初日はスタッフを張り込ませてね(笑)。実際は、ひとつも問題が起きなかったので、本当に安堵しました。

 そこで、V字回復もできました。3年も続けていると、映画館の館主さんは「来年はどのポケモンなの?」と聞いてくるようにもなりましたよ。映画館という、昔からあったメディアを変える仕掛けを導入できたのが大きかったでしょうね。

浜野 すごいなあ。映画というのは「location based entertainment」、ロケーションに依拠する娯楽って言われます。つまり、黒澤さんもよく言っていたけど、わざわざそこへ足を運ばせる理由、必然性が要る。スキャンダルをしでかした女優が出てる、っていうのでもいい。ともかく何かの理由が。 

 それを、石原さんは能動的に作り出したわけですね。これ、外国で興行するときは?

石原 アメリカですと、みなシネコン(スクリーンを多数持ち、常時番組を入れ替えるシネマコンプレックス)なので、ちょっと難しいですね。 

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku 
(C)Pokémon (C)ピカチュウプロジェクト1998(C)ピカチュウプロジェクト2010
(C)2010 Pokémon.(C)1995-2010 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.

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